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No.4393 重粒子線治療の保険適用について

 がんの治療方法の一つである重粒子線治療は、高度な医療技術であるとともに、費用が高額になることでも知られています。健康保険が適用されない部分があるためです。2022年4月から、保険適用が認められる重粒子線治療の範囲が拡大しています。また、一部の自治体では、重粒子線治療のためにローンを組んだ人に利子補給などを行っています。内容を確認していきましょう。

● 一部の子宮頸がんの重粒子線治療も保険適用に

 重粒子線治療とは、放射線治療の一つです。体にメスを入れることなく、重粒子線を照射することにより治療を行います。従来の放射線では困難であった部位も対象になるとされています。しかし、一部のがんを除いて先進医療の取り扱いとなっており、その技術料には健康保険が適用されません。医療機関によって違いがあるものの、300万円程度となる技術料が患者の大きな負担となります。

 2022年4月から、健康保険が適用される範囲が拡大しています。以前から対象になっていた前立腺などに加えて、手術による根治的な治療法が困難な以下のがんに対する重粒子線治療について保険適用が認められるようになりました。

・肝細胞がん(長径4センチメートル以上のもの)
・肝内胆管がん
・局所進行性膵がん
・局所大腸がん(術後再発)
・局所進行性子宮頸部腺がん
(※)

 保険適用となった重粒子線治療の技術料は、医療機関により異なりますが、160万円~240万円程度となっているため、技術料についての患者の自己負担は48万円~72万円になります。(入院などにかかる費用が別途必要です。)

 同じく先進医療である陽子線治療についても、健康保険の適用範囲が拡大しています。

● 重粒子線治療を支援する制度のある自治体も

 保険適用が拡大されたとはいえ、なお適用外のがんもあり、重粒子線治療の費用が高額になる場合もあります。金融機関の中には、重粒子線治療専用のローンを提供するところがあり、利用者に利子を補給する自治体もあります(大阪府、福岡県など)。また、費用の一部を助成する自治体もあります(神奈川県、山形県米沢市など)。重粒子線治療を受ける場合には、必ず自治体の制度を確認しましょう。

 保険適用は、有効性・安全性などが評価されたことでもあります。重粒子線治療が以前よりも身近なものになったと言えるでしょう。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 QST病院「令和4年度より新たに保険適用となる疾患に関するご案内」

2022.11.28

森田 和子(もりた・かずこ)

FPオフィス・モリタ 代表

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFPR認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)
大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/