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No.4045 「同一労働同一賃金」の対応できていますか?

● 2021年4月から中小企業も対象に

2021年4月からは中小企業においても、いよいよ「同一労働同一賃金」が施行される。大企業ではその1年前の2020年4月から施行されており、言葉として耳にすることはあっても詳しい内容までは理解していない人もいるだろう。

 今回は、日本商工会議所及び東京商工会議所が作成した『同一労働同一賃金まるわかりBOOK』を参考に、基本的な考え方を理解しておくこととする。

 「同一労働同一賃金」の基本的な考え方は、パートタイム・有期雇用労働法の第8条(均衡待遇)と第9条(均等待遇)に示されている。

 正社員と短時間・有期雇用労働者との間で、職務の内容や職務の内容・配置の変更の範囲(人事異動や転勤の有無、範囲)に違いがあれば、その違いに応じて短時間・有期雇用労働者の待遇を決め(均衡待遇)、いずれも同じであれば正社員と短時間・有期雇用労働者の待遇に差をつけてはならない(均等待遇)ということである。

 2020年10月に最高裁判所から「同一労働同一賃金」に関する重要な判決が複数出されたことから、こうした最新の判例も踏まえ、今後の方向性について自社の現状からできる対応策を考えていかなければならない。

● リスク回避のためにできることを実行する

 それでは、実際には何から取り組めばいいのだろうか。まず最初に、従業員を雇用形態(正社員、契約社員、パートタイマー、嘱託社員など)ごとに区分し、同一労働同一賃金の対象になる待遇について洗い出しをする必要がある。思っている以上にたくさんの項目があり、基本給だけに限らず、細かな手当、賞与、退職金、休暇、福利厚生、教育訓練等など広範囲にわたっている。

 次に、雇用形態の区分ごとに待遇差について確認し、その内容を検証し、これまでの人事関連資料、評価制度、就業規則などはもちろんのこと、実際に従業員から仕事内容や役割や責任、前職での経験などについて詳細なヒアリングも必要となり、そのうえで待遇差の是正が必要となれば就業規則等を改定することになる。

 各企業はリスクを回避するように動くことになるが、一方でできる限り人件費増を抑えたい気持ちもあり、自社に都合の良い解釈をして強引に進めていきたい企業もあるかもしれない。待遇差の妥当性については判断が難しいところであり、事案によって意見も分かれることもあるので専門家のアドバイスももらいながら、進めていくとよいだろう。

 なお、『同一労働同一賃金まるわかりBOOK』によると、日本商工会議所が実施した調査では、「同一労働同一賃金」の対応状況について、「対応済・対応の目途が付いている」と回答した企業は52.0%にとどまったそうだ。

 コロナ禍において経営状況が厳しくそれどころではないという経営者もいるだろうし、「同一労働同一賃金」への対応が思うように進んでいない中小企業は多いのではないかと推測される。しかし、「同一労働同一賃金」の施行まであと3カ月ほどしかない。早急な対応が求められているといえよう。

参照:東京商工会議所「『同一労働同一賃金まるわかりBOOK』を公開しました」

2021.01.12

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/