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No.4014 令和元年分の所得税等の確定申告、ICT利用が増加

● 新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた今年の確定申告

 令和元年分の確定申告期間は、まさに新型コロナウイルス感染症が拡大していた時期と重なり、多くの方々が申告・納税手続きに多大な影響を受けられたのではないだろうか。実際、確定申告期限が約1カ月延長(4月17日まで)され、それ以降の申告・納付についても柔軟な対応を行う措置が取られている。

 このコロナ禍において、各種手続きのデジタル化、テレワークの普及など、各分野でICT(Information Communication Technology=情報通信技術)化の進展が見られるが、確定申告においてはどうであったのか国税庁の資料から確認してみたい。

● 所得税等の確定申告でICTを利用した人の割合は70%を超える

 まず、このたび所得税等(所得税および復興特別所得税)の確定申告をした申告人員は約2,200万人で昨年とほぼ横ばい(平成30年分約2,220万人)、過去5年間においても申告人員の数は同水準で推移している。そのうち、還付申告をした人は約1,303万人で全体の約6割(59.1%)を占めている。所得区分別における給与所得者・雑所得者(確定申告人員全体の73.2%を構成)に限ってみると、還付申告をした割合は上昇し72.7%を占める。医療費控除などのために確定申告をするケースが多いのではないかと推測される。

 ところで、ICTを利用して確定申告をした人員の割合は、確定申告をした人員全体の72.2%を占め、過去5年間を通じてその占率は増加し続けている。昨年(平成30年)分が68.9%の占率なので、対前年比で3.3ポイントの増加であるが、これはコロナ禍という環境要因によるものではなく、過去からの継続したICT化浸透の流れによるものと考えられる(直近5年間連続して占率が増え続けているため)。申告内容別のICT利用状況実績は明らかにはされていないが、納税を伴わない申告手続きだけの還付申告であれば、ICT利用も取り組みやすいのではないかと考えられる。

 なお、ICTの利用は税務署や地方公共団体会場でも可能であるが、やはり主流となるのは自宅等での利用であり、ICT利用人員における68.9%(確定申告人員全体では49.7%)と7割近くを占めている。

● 自宅等でのICT利用者の4割は、書面で確定申告書を提出

 ただ、自宅でICTを利用して申告した人のうちで、e-Taxによる申告書提出まで行ったのは57.5%、残りの4割強の人は、国税庁HPの申告書作成コーナーで確定申告書は作成したが、書面にて提出したようである。税務署でのICT利用者に限ると93.1%がe-Taxで確定申告書を提出しているので、自宅におけるe-Taxの利用はまだまだ伸びしろがありそうである。

 なお、平成31年(2019年)1月以降の申告においてe-Tax利用の簡便化が図られており、マイナンバーカードを用いたマイナポータル経由やe-Taxホームページからe-Taxにログインするだけで対応が可能となっている。新型コロナウイルス感染症に関わる給付金申請等により、マイナンバーカードの取得が促進されたようであるが、今後はe-Taxに限らずマイナンバーカードによる手続きがますます浸透することが考えられる。

 e-Taxの普及に関しては、すでに税制上の特典等をも絡めた取組みも行われており、今後の展開を見守っていくことも興味深いと思われる。

参照:
国税庁「令和元年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)」
国税庁「e-Tax利用の簡便化の概要について」

2020.11.02
(セールス手帖社 堀 雅哉)