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No.3959 テレワークにおいても労働時間管理は必要

● テレワークは長時間労働になりがち

 新型コロナウイルスの影響により、テレワークを実施している企業は増えているが、中小企業においてはテレワークの制度が完全に整備されているところはまだまだ少ない。試験的に導入している企業が徐々に増えてきており、まさに就業規則の改定などに着手している企業が増え始めている。

 その中で多くの企業が懸念しているのは労働時間管理の問題である。テレワークは長時間労働になりやすく、企業は通常時以上に従業員の健康面にも配慮する必要がある。労働時間管理を適切に行うことで、ある程度は長時間労働を予防することができる。

 しかしながら、ひとくちにテレワークといっても従業員ごとに家庭環境や家族構成なども違っており、子育てをしながら仕事をする従業員などには柔軟な対応も必要である。法律の範囲のもとで会社のルールをつくり、どのように実務を行っていくのか対応力が求められる。

● 自己申告制の適正な運用をする際の注意

 通常の労働時間制度に基づきテレワークを行う場合、使用者は、その労働者の労働時間について適正に把握する責任がある。みなし労働時間制が適用される労働者を除き、厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、使用者は適切に労働時間管理を行わなければならない。これは通常勤務時と何ら変わらない。労働時間を記録する原則的な方法としては、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によることが求められている。また、やむを得ず自己申告制によって労働時間の把握を行う場合においても以下の項目に従っておく必要がある。

やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合

  1. 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと
  2. 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
  3. 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること

● 中抜けの時間はどう扱うのか

 テレワークを導入している企業から相談があるケースとしては、中抜け時間がある場合どう扱うのが適切かという質問である。例えば子育てしながらテレワークをしていると、どうしても就業時間の途中に近所の病院に2時間だけ行かないといけないということも結構ある。その際の労働時間の考え方としては、使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている場合であればその開始と終了の時間を報告させる等により、休憩時間として扱うことにして、休憩分の時間を労働者のニーズに応じ、始業時刻を繰り上げる、または終業時刻を繰り下げることで対応することができればいいと思われる。

 最後に、テレワーク中に時間外労働をさせた場合も、残業代を支払わなければならないことは覚えておきたい。テレワーク中は特別だからという理由のもと、時間外労働をさせているにもかかわらず時間外労働手当の支払いを一切認めないというような会社独自の運用は危険であるので実務上の取り扱いには注意したい。

2020.07.13

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/