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No.3958 遺言書の検認手続き~手続きに参加しないとどうなるか~

● 申立人以外の相続人は、検認手続きへの出席義務はない

 遺言者が、自筆証書遺言を遺して亡くなられた場合、家庭裁判所での検認手続きが必要となる。遺言の検認については、過去にも取り上げているが、検認手続きに参加しなかった場合、どうなるかを解説したい。

 遺言書の検認手続きは、遺言書を保管していた者や、遺言書を発見した相続人が申し立てることになる。申立書に所定の手数料の印紙を貼り、相続関係を証明する戸籍謄本等一式、所定の額の郵券(郵便切手)を家庭裁判所に提出する。提出する家庭裁判所は、「被相続人の最後の住所」を管轄する家庭裁判所となる。

 手続きが開始されると、すべての相続人に対し、検認手続きが行われる旨と出欠を連絡するようにとの通知書が届く。検認手続きへは申立人以外の相続人に出席義務はなく、都合がつかない場合や、遠方で行われる場合などは欠席しても差し支えない。

 ここで、本稿の主題であるが、検認を欠席するとどうなるか。結論としては、デメリットは基本的にないということである。

● 遺言に疑義ある場合は訴訟を提起するしかない

 検認の手続きでは、遺言書の保管状況や発見時の状態の確認や、筆跡や印鑑が被相続人のものかどうかの確認が行われる。しかし、ここで「筆跡が異なる」「印鑑が被相続人のものではない」と発言したとしても、検認調書にそのような発言があったことが記録されるだけであり、遺言が無効になるわけではない。遺言の無効を主張する者は、別途、訴訟等で主張する必要がある。逆に言うと、検認手続きを欠席し、後日遺言を確認したところ疑義が生じた場合、検認手続きの場で主張しなかったことで不利に取り扱われることはない。遺言に疑義がある場合、検認手続きに出席しても、欠席しても、結局訴訟等を提起する必要があるということである。

 検認手続きの場では、遺言書の原本が出席した相続人に示される。欠席した場合は、当然このような機会がないわけであるが、検認調書には、遺言書のコピーがつづられているため、後日、筆跡や印鑑も含め内容を確認することができる。なお、検認調書は自動的に送られてくるわけではなく、必要とする相続人が家庭裁判所に請求する必要があることは留意したい。

 このように、検認手続きを欠席しても法律上のデメリットはない。しかし、相続人同士が被相続人の生前に交流が少ないケースの場合は他の相続人と顔を合わせる良い機会である。また、比較的交流がある場合でも、葬儀や四十九日などの場と違い、他のことに煩わされることなく、相続人同士で話をすることができる。そのため、特に差し支えがない場合は出席することが望ましいのではないだろうか。

2020.07.13
(セールス手帖社 田中一司)