お客様のお役に立つ JAIFA学習帖

  • サイト内検索:

No.3956 企業に対してパワハラでの損害賠償請求が頻発する!?

● 大企業は今年6月から、中小企業は2年後の4月からパワハラ対策が義務化

 令和2年6月1日、パワーハラスメント(以下パワハラ)関係及びセクシュアルハラスメント、 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント関係の改正が施行されました。その中でも特に注目を集めているのは、パワハラ対策の法制化です。これにより、令和2年6月1日から、職場におけるパワハラ防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが企業(事業主)の義務とされます(この措置義務については、一定の中小企業においては、令和4年3月31日までは努力義務とされ、義務化されるのは令和4年4月1日からとなります)。

 職場におけるパワハラとは、職場において行われる以下の要素をすべて満たすものをいいます。

① 優越的な関係を背景とした言動
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③ 労働者の就業環境が害されるもの

 ただし、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しません。

 このようなパワハラを防止するために企業(事業主)が講ずべきものとして、以下の措置が義務化されています。

●企業(事業主)の方針等の明確化及びその周知・啓発

  1. 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し労働者に周知・啓発すること
  2. 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し労働者に周知・啓発すること

●相談に応じ、適切に対応するため必要な体制の整備

  1. 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
  2. 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようすこと

●職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

  1. 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  2. 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
  3. 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
  4. 再発防止に向けた措置を講ずること

●そのほか併せて講ずべき措置

  1. 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
  2. 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 また、企業(事業主)が、労働者が職場におけるパワーハラスメントついての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いをしてはいけません(法律上禁止)。

● 法改正により労働者のパワハラに対する意識が高まる!?

 このような状況の下、各企業(事業主)ではパワハラの相談窓口を設置するのみでなく、パワハラの原因や背景となる要因を解消するための取り組みなど、さまざまな取り組みを実施もしくは実施予定だと思います。ところが、中には「パワハラ防止のための研修でパワハラの定義について詳しく説明したところ、従業員の意識が高まったことで、かえって今まで見過ごされてきたパワハラ行為に対する被害の訴えが増えた」などという声も聞こえてきます。従業員の意識が高まることで、企業にとっては従業員からの損害賠償請求リスクに備える必要も高まってきたとも言えます。

 このような損害賠償請求リスクに対応する保険としては、「雇用慣行賠償責任保険(特約)」(名称は会社によって異なります)があります。従業員等に対するパワハラ等に起因して会社や役員使用人が負担する損害賠償責任を補償するものですが、パワハラ対策の一つとして検討しておきたい保険です。

2020.07.06

【参考情報】

 また、生命保険の募集人の方は、損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります。今回のテーマと同一ではありませんが、労務リスクからのアプローチトークも収録されています)

「違いを生み出すファーストアプローチ」

第2章 第1話
「労災事故や社員の自殺で会社の過失が認定された!巨額の賠償請求は保険で補償されるの?」

定価 1,210円(税込)
A4判/72ページ
http://www.fps-net.com/shopping_03304509.html


「違いを生み出す生損保リスクチェック」

第3章 法人編5
「「労災事故の内容で補償が違う」のは変?」

定価 1,210円(税込)
A4判/80ページ
http://www.fps-net.com/shopping_03304710.html

水谷 力(みずたに・ちから)

株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/生涯学習開発財団認定コーチ
大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。