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No.3947 6割強はコロナ禍収束後もテレワークを行いたい

● 自宅での勤務で効率が上がった人は3分の1にとどまる

 公益財団法人日本生産性本部は5月22日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響に関するアンケート調査(第1回 働く人の意識調査)結果を取りまとめ、公表した。

 この調査は、緊急事態宣言の発出から約1か月後の5月11日(月)~13日(水)に、20歳以上の国内の雇用者(就業者から自営業者、家族従業者等を除く)1,100名を対象にインターネットで行われた。

 調査結果によると、新型コロナウイルス感染症拡大が収束した後もテレワーク※を行いたいかという質問に対しては、「そう思う」が24.3%、「どちらかと言えばそう思う」が38.4%と、テレワークを行ってもよいと前向きな意向が62.7%に達している。

 しかし一方では、「自宅での勤務で効率が上がった」と評価する人は33.8%(効率が上がった7.2%とやや上がった26.6%の合計)にとどまっており、効率が下がった(下がったとやや下がったの合計)が3分の2を占めるなど、課題もいろいろ浮き彫りになってきた。

 今後の経営課題の1つとなるテレワークのあり方、生産性や従業員の満足度などは、もっと掘り下げて考えるべき課題でありこのような調査を定点観測していくことは大変重要であり企業経営者、幹部を含めて参考にすべきである。

● 約3割が自宅での勤務を実施

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって政府は緊急事態宣言を発出、それを受けて企業は「人との接触を7割、できれば8割削減」するための施策を打ち出したわけだが、これらを受けて自身の働き方に変化があったかどうか回答者に質問している。「大きく変わった」が24.3%、「多少変わった」が35.0%で約6割の人には影響があったが、その一方で4割は「特に変化はない」と答えている。

 感染防止対策として三密(密集、密閉、密接)を避けることが求められたことから、働き方についても企業は柔軟な対応が求められた。柔軟な働き方の実施状況についての質問では、回答者が現在(5月11~13日時点)行っている主なものを挙げると、「自宅での勤務」が29.0%、「時差出勤」が16.3%、「短時間勤務」が15.4%、「一時帰休」が7.9%であった。実施の割合を見る限り、柔軟な働き方が一般に定着したとはまだまだ言えない状況である。

● 課題は山積み、変化を受け入れ前に進むこと

 効率アップを実感できている人の割合は少ないが、一方で57.0%の人は自宅での勤務に満足している(満足しているとどちらかと言えば満足しているの合計)と回答しており、テレワークが今後拡大・定着していく可能性は大きいであろう。

 テレワークをスムーズに行う上での課題の主な回答を挙げると、「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」が48.8%、「Wi-Fi など、通信環境の整備」が45.1%、「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」が43.9%、「Web会議などのテレワーク用ツールの使い勝手改善」が32.1%、「情報セキュリティ対策」が31.5%、「押印の廃止や決裁手続きのデジタル化」が29.8%、「上司・同僚との連絡・意思疎通を適切に行えるような制度・仕組み」が28.0%、「仕事のオン・オフを切り分けがしやすい制度や仕組み」が27.7%であった。テレワークが行える自宅等での環境整備と社内制度の改善が主に求められていると言えよう。

 会社側は、テレワークの課題を1つずつクリアしていきながら働く人の生産性をあげていかなければならないし、設備投資も必要になる。一方で今後は移動を伴う出張を減らし、Web会議をできるだけ増やし、必要のある業務とそうでない業務を大胆に仕分けしていくことで働き方や仕事の進め方も変えていかなければならない。

 緊急事態宣言は解除されたが、「新しい生活様式」への移行が求められていることには変わりはない。業界別のガイドラインが作成されるなど働く人の意識も大きく変わってきていることから、会社もこれにあわせて、前向きに変化を受け入れていく必要があると言える。

※ ここでいうテレワークは、「自宅での勤務」のほかに、「サテライトオフィス、テレワークセンター等の特定の施設での勤務」「モバイルワーク(特定の施設ではなく、カフェ、公園など、一般的な場所を利用した勤務)」を含む。

参照: (公財)日本生産性本部「第1回 働く人の意識調査 新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響を調査」

2020.06.22

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/