No.3943 まとまった資金が得られる「リースバック」はお得か?
近頃、耳にするようになった「リースバック」。お得な制度などと言われていますが、よく分からないという質問を受けることが増えてきました。そもそもリースバックとはどのような制度なのか、どのようなメリットとデメリットがあるのかを知り、どのように活かせるのか考えてみたいと思います。
● リースバックってなに?
そもそもリースバックとは、自宅などの不動産を、リースバックを取り扱う専門の不動産会社に売却。その後、不動産の所有者である不動産会社と賃貸契約を結び、売却済みの家に、そのまま住み続けることができる制度のことです。買い取り代金は一括で支払われますので、まとまった資金を得ることができます。
成人であれば利用可能で、共有名義であっても、名義人全員の同意があれば利用できます。取扱会社によって地域にバラつきはありますが、ほぼ全国で利用することができます。
対象となる不動産は、戸建て、マンションはもちろんのこと、土地、事業用不動産なども対象になります。ただし、未登記の不動産や建築基準法で再建築不可となっている接道要件を満たしていない物件や借地上の建物などは対象になりません。
● リースバックとリバースモーゲージの違い
リースバックと似ているものとして、リバースモーゲージというものがあります。
リバースモーゲージは、自宅などを担保にして金融機関から融資を受けるというもので、持ち主が亡くなったときに物件を売却して一括返済するというのが一般的です。
リースバック | リバースモーゲージ | |
---|---|---|
融資の有無 | なし | あり |
所有権移転 | あり | なし |
担保 | 不要 | 必要 |
特徴 | 不動産を売却するがそのまま居住可能 | 不動産を担保にして年金の形でお金を受け取る |
● メリットとデメリットについて
ここで確認しておくべきなのは、どのようなメリットとデメリットがあるのかということです。
【メリット】
- 売却しても、そのまま住み続けることができる
- 将来、買い戻すこともできる
- 売却したことを他の人に知られずにすむ
- 引っ越ししないので、子供の学区が変わらない
- まとまった現金を手にできる
【デメリット】
- 売却価格が低くなりやすい
- 家賃が周辺相場に比べて高くなることがある
- 買い戻すときの価格が、売却価格よりも高くなることが多い
- 子供に財産として残すことができない
- 家族が知らない、同意がない場合は相続時にトラブルになりやすい
● リースバックの注意点と活用方法
メリットとデメリットを見ていくと、若い世代、シニア層、それぞれにメリットになる部分とデメリットになる部分があります。いずれの場合も、一見すると、持ち主が変わったように見えない分、トラブルは発生します。家族や法定相続人になり得る人たちには、リースバックを利用したい旨を相談し、同意を得ておくと安心です。
リースバックが向いている人は、不動産を複数持っている、急いで不動産を現金化したい人などです。
休業などで収入が減ってしまった、給付金や休業手当などがすぐにもらえないなどのケースであれば、スピーディに現金を手にできるリースバックは、検討の余地はあります。現金を得る方法の1つとして、検討してみるのも良いのではないでしょうか。
2020.06.15
飯田 道子(いいだ・みちこ)
海外生活ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナー(CFP)
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっている。主な著書には、「宅建資格を取る前に読む本」(総合資格)、「介護経験FPが語る介護のマネー&アドバイスの本」(近代セールス社)などがある。
海外への移住や金融、社会福祉制度の取材も行う。得意なエリアは、カナダ、韓国など。