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No.3939 新型コロナの影響で厚生年金保険料等の納付を猶予

● 重い負担に苦しむ事業主

 今回の新型コロナウイルス感染症によって厚生年金保険料等の納付に苦慮されている事業主も少なからずいると思われる。またこの先、売上の回復がすぐに見込まれない中では、利用可能な制度や政府の支援策は押さえておきたい。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、事業等に係る収入に相当の減少があった事業主は、申請により厚生年金保険料等の納付を1年間猶予することができる。この納付猶予の特例が適用されると、担保の提供は不要となり、延滞金もかからないことになる。

 対象となる事業所の主な要件としては、次の1、2のいずれも満たすこととなっている。

  1. 新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること(収入の減少が20%に満たない場合は、管轄の年金事務所に要相談)
  2. 厚生年金保険料等を一時に納付することが困難であること

● 納付を1年間猶予する

 対象となる保険料は、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する厚生年金保険料等が対象であり、上記の期間のうち、既に納期限が過ぎている厚生年金保険料等(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利用できることになっている。今回はコロナ禍の特例により通常よりも審査が簡略化されているので、複雑にみえる手続きはそれほど負担にはならないとのことだが、日本年金機構で発表しているリーフレットでその概要と流れだけはしっかり押さえてから相談にのぞんでいただきたい。

 緊急事態宣言は解除されたが、基本的には行動自粛が続いている状況下であるので、対面での相談は原則行っておらず、所轄の年金事務所の窓口に書類を郵送するようにお願いをしているとのことのため、不明点はまず電話相談をすることからはじめたい。

● 保険料の免除ではなく猶予である

 厚生年金保険料については毎月納付する必要があるわけだが、この制度のもとでは、その都度申請する必要はなく、2021年1月31日までに納期限が到来する保険料については、申請書の所定欄にチェックを入れておくと、納期限までに納付がされなかったことをもって、各月の申請があったものとみなされる。

 猶予期間中の口座振替停止処理についても、チェックボックスへのチェックのみで一時的に口座振替が停止されることになっており、わかりやすい。支払うことができないというほどではないが、事業資金がギリギリになってしまっているので「少し猶予してもらえるなら利用してみよう」というような事業主は検討してみるのもよいだろう。

 なお、納付の猶予の対象とならなくても猶予期間中に分割納付する方法などが認められる場合があるので、日本年金機構のホームページで確認してもらいたい。

 最後に、この制度はあくまで納付の猶予であって保険料を免除するものではない。支払うことができないからといってそのままにしておくと、通常の保険料等に加えて延滞金が加算されることになり、結果的に結構な金額になってしまうこともあり得るので注意が必要である。

 一日でも早く自社の財務状況を把握してまずは相談するところから着手したい。

※ 本稿の内容は、令和2年5月27日時点のものです。最新情報は日本年金機構のホームページでご確認ください。

参照: 日本年金機構「【事業主の皆様へ】新型コロナウイルス感染症の影響により厚生年金保険料等の納付が困難となった場合の猶予制度について(納付の猶予(特例)に係る内容を追加しました。)」

2020.06.08

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/