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No.3895 新型コロナウイルスにかかる雇用調整助成金の特例が拡大

● 新型コロナウイルスの影響を受ける事業主が対象に

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症への対応として、令和2年2月14日より雇用調整助成金について特例措置を講じていましたが、2月28日に対象を拡大、さらに3月4日には同省ホームページで「今般の新型コロナウイルス感染症により影響を受ける事業主を支援するため、雇用調整助成金の特例措置の拡大を今後行う予定」と発表、緊急事態宣言を発表した地域(3月4日時点では北海道のみ)の事業主への支援を強化する方針です。

 同特例は、もともと「日本・中国間の人の往来の急減により影響を受ける事業主であって、中国(人)関係の売上高や客数、件数が全売上高等の一定割合(10%)以上である事業主」と対象が一部の事業主に限られていましたが、感染症者数の増加にともない、同月28日から新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主というように全業種に対象範囲が拡大され、これにより「日本人観光客の減少の影響を受ける観光関連産業や、部品の調達・供給等の停滞の影響を受ける製造業など」も幅広く特例が受けられるようになりました。

 雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を対象に、雇用の維持を守るために労働者に対して一時的な休業、教育訓練、出向を行った場合に休業手当や賃金などの一部を助成する制度です。例えば休業手当や教育訓練を実施した場合の賃金相当額に対して助成率は、大企業は1/2、中小企業は2/3となります。新型コロナウイルス感染症による経営環境の悪化は経済上の理由に当たり、それによって事業活動が縮小して休業等を行った場合は助成対象となります。具体的には以下のような例です。

  • 取引先が新型肺炎の影響を受けて事業活動を縮小した結果、受注量が減ったために事業活動が縮小してしまった。
  • 国や自治体等からの市民活動の自粛要請の影響により、外出等が自粛され客数が減ったために事業活動が縮小してしまった。
  • 風評被害により観光客の予約のキャンセルが相次ぎ、これに伴い客数が減ったために事業活動が縮小してしまった。

● 同特例措置の主な内容

 特例は、休業等の初日が令和2年1月24日から同年7月23日までの場合に適用されます。対象となる休業等は事前に計画届の提出が必要でしたが、特例により事後提出が可能となりました。令和2年1月24日以降に初回の休業等がある計画届については、同年5月31日までに提出すれば、休業等の前に提出されたものとされます。

 生産指標の確認対象期間は3か月でしたが、1か月に短縮されたことで、最近1か月の販売量、売上高等の事業活動を示す指標(生産指標)が前年同期に比べて10%以上減少していれば生産指標の要件を満たせるようになりました。なお、令和2年1月24日時点で設置後1年未満の事業所は生産指標の前年同期比を出せませんが、この場合は令和元年12月の指標と比較することでクリアできます。

 また、最近3か月の雇用指標の平均値が前年同期比で増加している場合は助成対象となりませんでしたが、この要件が撤廃されました。

 以上のように、今回の社会情勢による経営危機から雇用調整に取り組む事業主に本来認めていない事後申請も可能とするなど、大胆な緩和策がとられています。事業存続のため助成金の活用もご検討ください。

新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大(厚生労働省ホームページ、3月4日時点)

※ 本稿の内容は3月4日執筆時点のものです。最新の情報は厚生労働省のホームページでご確認ください。

2020.03.16

半田 美波(はんだ・みなみ)

社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。