お客様のお役に立つ JAIFA学習帖

  • サイト内検索:

No.3891 研修や教育訓練は、労働時間に該当するの?

● 多様化進む研修・教育訓練

 新年度がはじまる4月まであと少しということで、会社としても新たな取り組みや新入社員を迎え入れる準備を進めたいところではあるが、労働基準法の改正への対応※にも力を入れなければならない。しかしながら、社員に対して研修や教育訓練をした場合、それが労働時間に該当するのかどうかを経営者や人事労務担当者がわかっていないケースもかなりあるようだ。

 特に最近は働き方も多様化しており、研修・教育訓練等もいろいろなパターンがあり、それらが労働時間に該当するかどうかという相談が増えてきている。今回は、労働時間の適正な管理のためにも、研修・教育訓練に関するところの労働時間の考え方についてまとめておくこととする。

● 自由参加の研修等は労働時間ではない

 そもそもの労働時間の定義を確認しておくと、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと」である。使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当する。いうまでもないが、勤務時間の中から休憩時間を差し引いた時間が労働時間となる。したがって休憩時間であっても、実際に労働から解放されていない時間については労働時間となる。

 研修・教育訓練に関しての労働時間については、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、それに費やされた時間は労働時間に該当しない。ただし、研修・教育訓練に不参加であったことが、就業規則で減給処分の対象とされていたり、それによって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合は、自由参加の研修・教育訓練であっても労働時間に該当する。

 所定労働時間内に行われているものであれば問題ないのだが、やはり勤務時間外や休日に行われるものではっきりと強制参加とはなってはいないが、明示はされていなくても当然参加するべきものと解されるような難しいケースも増えてきており、トラブルになりやすい。厚生労働省では最新のリーフレットで、労働時間に該当するかしないか事例で紹介している。そこで本稿でも以下に5つの事例を掲示するので、労働時間に該当するものか、それとも該当しないものかを考えてみていただきたい(解答は文末に掲載)。

①会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務との関連性はない。
②使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。
③終業後の夜間に行われるため、弁当が提供されるものの、参加の強制はされず、また、参加しないことで不利益な取扱いもされない勉強会。
④労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、単独でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
⑤自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。

※ 中小企業も2020年4月から「時間外労働の上限規制」が適用される。時間外労働の限度時間を原則月45時間、年360時間とし、臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)と設定しなければならない。

答え:
労働時間に該当する  ② ⑤
労働時間に該当しない ① ③ ④

参照:厚生労働省「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」

2020.03.09

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/