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No.3886 平成30年分の国外財産調書、4.3%増の9,961人が提出

● 提出件数、総財産額ともに5年連続の増加

 近年、国外財産の保有が増加傾向にあるなか、国外財産に係る所得税や相続税の課税の適正化が喫緊の課題となっていることから、納税者本人から国外財産の保有について申告を求める仕組みとして、平成24年度税制改正において国外財産調書の提出制度が創設され、平成26年1月から施行された(初回の調書は平成25年分)。

 国税庁はこのほど、国外財産調書制度創設後6年目となる平成30年分の国外財産調書の提出状況を公表した。

 それによると、平成30年分(30年12月31日における国外財産の保有状況を記載した)国外財産調書は、昨年3月15日を期限に提出されているが、提出件数は前年比4.3%増の9,961件、その総財産額は同6.3%増の3兆8,965億円とともに5年連続で増加した。

● 「東京局」が提出件数の6割半ば、財産額の7割強を占める

 局別に提出件数をみると、「東京局」6,413件(構成比64.4%)、「大阪局」1,405件(同14.1%)、「名古屋局」719件(同7.2%)の順に多く、この都市局3局で全体の8割半ばを占めた。

 財産額でみると、「東京局」は2兆8,458億円にのぼり、全体の73.0%を占め、大阪(13.6%)・名古屋(5.6%)との3局で9割強を占める。

 また、財産の種類別総額では、「有価証券」が54.2%を占める2兆1,135億円で最多、「預貯金」5,771億円(構成比14.8%)、「建物」4,360億円(同11.2%)、「貸付金」1,880億円(同4.8%)、「土地」1,557億円(同4.0%)のほか、「それ以外の財産」4,261億円(同10.9%)となっている。

● 国外財産調書提出制度の特例措置

 国外財産調書提出制度は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5千万円を超える国外財産を有する居住者は、翌年3月15日までにその財産の種類や数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、税務署長に提出しなければならないというもの。個人を対象に平成26年から義務化されたが、国外財産調書は、自主的に自己の情報を記載し提出するものであることから、特例措置等が設けられている。

 具体的には、(1)調書を期限内に提出した場合に、記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても加算税を軽減(▲5%)、(2)調書の提出がない場合又は提出された調書に国外財産の記載がない場合に、その国外財産に関して所得税の申告漏れが生じたときには、加算税を加重(+5%)する。また、2015年からは故意の不提出や虚偽記載に対して1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される。

 国外財産調書の提出者及び提出を要すると見込まれる者に対する、平成30事務年度(平成30年7月~令和元年6月)における所得税及び相続税の実地調査の結果、上記(1)の軽減措置を適用したのは194件、増差所得等金額は49億8,814万円、(2)の加重措置を適用した件数は245件、同112億9,380万円だった。

 なお、令和2年度税制改正においては、これらの特例措置の見直しが行われるので注意したい。

参照: 「平成30年分の国外財産調書の提出状況について」国税庁(令和2年1月)

2020.02.25

浅野 宗玄(あさの・むねはる)

株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
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