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No.3885 退職のきっかけは、やりがいの欠如と給与の低さ

● 退職者の本当の退職理由を知ることが重要

 エン・ジャパン株式会社は、自社が運営する総合転職支援サービスを利用するユーザーを対象に、「退職のきっかけ」についてアンケート調査を実施し、約1万人から回答を得た。退職を考えたことのある人を対象に退職を考え始めたきっかけを尋ねたところ、トップ3は「やりがい・達成感を感じない」(41%)、「給与が低かった」(41%)、「企業の将来性に不安を感じた」(36%)という結果であった。

 各企業は離職率を下げるために退職者から本当の退職理由などをヒアリングし、その対策にも力を入れているが、なかなか成果に結びついていないようだ。これらの回答結果などを参考にして自社の現状を振り返って、従業員のマネジメントにより力をいれていきたいところである。

● 男性は「企業の将来性に疑問」を感じた時

 退職のきっかけについて年代別回答内訳を見てみると、傾向が浮かび上がってくる。20代と40代とで10ポイント以上差がついたのは下表のとおりであった。

  20代 30代 40代
給与が低かった 46% 44% 36%
残業・休日出勤など拘束時間が長かった 33% 28% 19%
自分の成長が止まった・成長感がない 28% 28% 18%

 一方、男女別で見て差が大きいのは、男性は「企業の将来性に疑問を感じた」(男性40%に対して女性33%)、女性は「結婚・家庭の事情」(女性13%に対して男性7%)や「体調を壊した」(女性17%に対して男性12%)という回答が多い。また、20代は「給与」「拘束時間」「社風や風土」「自分の成長」「やりたい仕事」などで不満を感じると退職を考える傾向が読み取れた。

● 急な退職、引継ぎの不備に困っている

 周囲の社員が退職する際に「この進め方は良くない」「困った」と感じたことはあるかという質問に対しては、36%が「ある」と回答している。具体的な出来事としては、第1位は「退職日が急すぎる」(53%)、第2位が「引継ぎが適当(引継ぎ期間・内容など)」(42%)、第3位が「退職を伝えるタイミングがよくない」(28%)となっている。

 このように会社の業績にも影響しかねない退職を決めた人の行動については、会社のほうでも事前に対策できることもある。就業規則や社内のルールを見直すことも時には必要である。

 一方で退職を決めた人は転職先のことを優先して考えるようになり、以前に比べて職場の人々への配慮が薄れてしまっているような気がするが、それは時代の変化も関係しているといえるだろう。転職ということ自体が当たり前になり、転職をしようとする人にとって有益な情報があふれている中では仕方がない部分である。

 実際に職場内での人間関係、パワハラや過重労働が退職理由であれば、会社に対して不満がたまっているわけで、会社側が退職時に協力的になってほしいと思ってもそれは都合のいい話であって退職する従業員にはなかなか伝わりにくいがそこをうまくまとめるのも腕の見せ所である。逆に退職時に大きなトラブルにならないようにするためにも、会社としても職場の風土や職場環境を良くする努力は常に怠らないようにしてしっかりヒアリングし、退職する本人からの本音の言葉やアドバイスなども受け止めるようにしたい。

参照: エン・ジャパン株式会社 1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査―『エン転職』ユーザーアンケート―

2020.02.25

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/