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No.4644 認知症への備え 大切な財産を守るために

● 成年後見制度の活用

 要介護の原因の第1位となる認知症は、今後ますます深刻化していく極めて重要な社会問題である。

 認知症になり判断能力が低下すると、生活に必要なお金の管理や買い物、契約などができなくなるケースがある。また、本人の意思に反して、家族が財産を勝手に処分してしまうことも考えられる。

 認知症などにより判断能力が衰えた人などの財産を管理し、契約など法的な面から日常生活を守る制度として「成年後見制度」がある。

 成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」があり、認知症対策のひとつとして制度の内容を理解し、必要であれば早めに備えることが大切である。なお、法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な人が利用する制度であり、任意後見制度は、元気なうちに契約し、将来に判断能力が衰えたときに守ってもらう制度である。

● 法定後見制度

 法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な状態になっている人について、本人または家族などが家庭裁判所へ制度の利用を申請し、承認されれば利用することができる。

 対象者の判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の区分があり、支援者として「成年後見人」「保佐人」「補助人」、支援者の後見内容を監視する「成年後見監督人」「保佐監督人」「補助監督人」がおり、いずれも家庭裁判所が選定する。

 成年後見人などには法律でできること(代理権・同意権・取消権などの権限)が決められている。

 家庭裁判所は、後見の業務量などから成年後見人などの報酬額を決め、月額20,000円から60,000円程度、監督人の報酬はその半分程度である。

● 任意後見制度

 任意後見制度は、将来に認知症などで判断能力が不十分になったときに備えて、元気なうちに任意後見契約を締結しておく制度である。

 誰に、何を、どのように守ってほしいかを決めて、公正証書で任意後見契約を締結し、判断能力が不十分になったら、家庭裁判所に申し立て、契約内容にもとづいて実行される。

 任意後見人は利用者が決め、報酬は契約で自由に設定できる。

● 家族信託

 成年後見制度以外では家族信託というものがある。

 資産を持つ人(委託者)が、信頼のできる家族(受託者)に資産を預け(信託契約)、財産を管理・運用することから得られる利益を受益者(認知症対策の場合は受益者=委託者)が受け取るというもの。

 成年後見制度では、家庭裁判所の監督の下で財産管理が行われるが、家族信託では、家庭裁判所は関与せず、信託の目的に沿って柔軟に財産管理をすることができる。

2024.04.01

西海 重尚(にしうみ・しげひさ)

西海FP事務所 代表
CFP®認定者、1級 ファイナンシャル・プランニング技能士、公的保険アドバイザー、終活アドバイザーなどの資格を保有。

慶應義塾大学 経済学部卒。
33年間のサラリーマン生活において大手損害保険会社、生命保険会社、FP系出版社に勤務。
現在は独立系FPとなり、保険のアドバイザーとして活動中。

自己紹介用ホームページ https://fuku29390fpo.com