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No.4642 2024(令和6)年度の在職老齢年金の支給停止調整額は50万円!

 2024年1月19日に厚生労働省から「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」が発表されました。前回(No.4626)は2024年度の年金額の改定についてお伝えしましたが、年金額と同時に在職老齢年金の支給停止調整額も発表されました。

● 在職老齢年金とは

 在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受け取っている60歳以上の人が会社(=厚生年金適用事業所)で働く場合、賃金と年金額が基準額(支給停止調整額)を超えてしまうと、年金額の一部もしくは全額が支給停止される制度です。

 厚生年金保険に加入している人が対象なので、社会保険に加入していない、もしくは個人事業主の人等は対象となりません。

 在職老齢年金の計算は、賃金(賞与込み月収)と年金の合計額が、基準額(支給停止調整額)を上回る場合に、上回った金額の2分の1の年金が支給停止されます。

 具体的に、調整される年金受給月額は、基本月額?(基本月額+総報酬月額相当額?48万円)÷2で求めます(2023年度)。

 2023年度の支給停止調整額は48万円でしたが、2024年度は50万円になります。このことで、2023年度に一部または全額支給停止されていた人でも、受け取る年金額が増える可能性があります。

● 受け取る年金額が増える

 実際にどのように変わるのか、65歳Aさんを例に確認しましょう。

Aさんの情報
賃金(標準報酬月額)・・・44万円(賞与なし)
年金額(老齢厚生年金の報酬比例額)・・・120万円(月額10万円)

 賞与がある場合は、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で除した額を標準報酬月額に加算します。Aさんの場合、賞与がない前提ですので標準報酬月額の「44万円」が総報酬月額相当額となります。また、基本月額には「老齢基礎年金」および「経過的加算額」は含みませんが、厚生年金基金に加入していた期間がある場合、代行部分を年金額に含めて計算します。今回は厚生年金基金等を考慮に入れませんので、120万円の12分の1の「10万円」が基本月額となります。

 2023年度における在職老齢年金の計算は、
「10万円-(10万円+44万円-48万円)÷2=7万円」
となるため、Aさんが受け取れる老齢厚生年金は月額7万円でした。

 ところが、2024年度においては支給停止調整額が50万円に引き上がったため、在職老齢年金の計算は
「10万円-(10万円+44万円-50万円)÷2=8万円」
となり、2023年度より月額1万円多く受け取れるようになりました。
 このように、支給停止調整額が引き上がると、受け取る年金額も増えるのです。

● まとめ

 年金額と同じように、在職老齢年金の支給停止調整額も毎年度変わる可能性があります。賃金(標準報酬月額)が変わったり、賞与が支給された時は、受け取る年金額が変わりますが、今までと賃金等が変わらなかった人でも、受け取る年金額が変わることもありますので確認が必要です。

参考:
 厚生労働省「令和6年度の年金額改定について」
 在職中の年金(在職老齢年金制度)

2024.03.25

三角 桂子(みすみ・けいこ)

社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。

公式サイト https://sr-enishiafp.com/