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No.4640 買換え特例で期限までに買換資産を買えなかったとき

● 買換資産の取得期間を延長できる場合

 事業用資産の買換え特例の適用を受けると、一定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができる(譲渡益が非課税となるわけではない)が、買換え特例の適用を受けるためには、資産を譲渡した年か、その前年中あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得することが必要となる。買換資産をこの期間内に取得しないときは原則としてこの特例は受けることができない。

 ただし、買換資産の取得において、やむを得ない事情があれば、買換えの期限が考慮される。やむを得ない事情があるため、資産を譲渡した年の翌年1月1日から12月31日までの期間内に買換資産の取得をすることが困難な場合には、資産を譲渡した年の翌年12月31日後2年以内において税務署長が認定した日までの期間(これらの期間を「取得指定期間」という)に、買換資産の取得期間を延長することができる。

● やむを得ない事情とは

 この「やむを得ない事情」とは、

(1) 工場などの敷地の造成や建設移転にかかる期間が通常1年を超えること
(2) 法令の規制等により取得計画の変更をしなければならなくなったこと
(3) 売主、その他の関係者との交渉が長びき、簡単に資産の取得ができないこと
(4) (1)から(3)に準じた事情があること

 以上、4つのいずれかのケースに当てはまる場合をいう。また、特定非常災害に基因するやむを得ない事情がある。

 特定非常災害に基因するやむを得ない事情により、取得指定期間内に買換資産を取得することが困難となった場合には、取得指定期間の末日後2年以内の日で税務署長が認定した日までの期間に、取得指定期間を延長することができる。特定非常災害とは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいう。

 買換資産の取得期間の延長を受けたいときは、資産を譲渡した年についての所得を申告する際に一定事項を記載した「やむを得ない事情がある場合の買換資産の取得期限承認申請書」を税務署長へ提出する必要がある。

 一定事項とは、

(1) 申請者の氏名および住所
(2) 買換資産を取得することが困難であるやむを得ない事情の詳細
(3) 買換資産の取得予定年月日および税務署長の認定を受けようとする日
(4) その他参考となるべき事項

となっている。

2024.03.25

浅野 宗玄(あさの・むねはる)

株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php