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No.4591 トラックドライバーの約3割、物流2024年問題を知らず

● 約8割が研修や説明等が何も行われていないと回答

 社内規程管理クラウドサービスなどを展開する株式会社KiteRaは、20代以上のトラックドライバー男女600名を対象に「物流の2024年問題に関する実態調査」を実施した。対象者の属性を見ると、年代は20~30代の若手は12.1%に対し50歳以上の年配者が60.2%を占め、性別では女性がわずか8.0%と、高齢化や女性比率の低さが顕著であった。

 来年(2024年)4月からトラックドライバーの時間外労働(残業)の上限が年間960時間に規制されることで「物流2024年問題」が起こると言われているが、トラックドライバーの約3割(34.0%)が物流2024年問題を「知らない・よくわからない」と回答、約8割(77.0%)が勤務先でこの問題に関して研修や説明等が何も行われていないと回答しており、物流2024年問題についてドライバー自身の理解がまだまだ進んでいないことがわかった。

● 残業80時間以上は、来年4月から上限規制違反となる可能性が高い

 1か月間の平均時間外労働(残業)時間に対する回答は、最多が「40時間未満」(時間外労働なし含む)74.2%、次いで「40時間以上60時間未満」11.3%、「60時間以上80時間未満」8.2%、「80時間以上」6.3%であった。年間に換算してみると80時間以上は960時間以上となるため、現状では1割弱が2024年4月に施行される時間外労働の上限規制違反となってしまう可能性が高く、ドライバー自身も強く意識する必要がある。

 時間外労働(残業)が発生する原因についての回答は、最多が「人員が足りないため」57.8%、次いで「仕事量が多いため」55.3%、「残業をすることが当たり前の環境のため」34.2%だった。一方で「収入を増やすため自ら望んで残業している」(21.2%)という自ら好んで残業している人が一定数いることもわかった。

● 上限規制によって約7割が収入の減少を心配している

 時間外労働の上限規制によって起こる心配事についての回答は、最多が「収入の減少」で約7割(67.3%)に達しており、想像以上に深刻である。上限規制を受けての対応として、「ドライバーとして物流他社へ転職」予定の人が7.0%、「ドライバーを辞めて異業種(異職種)へ転職」予定の人が7.0%、「副業を始める」予定の人が5.7%、「独立」予定の人が0.8%と、約2割が転職や副業、独立を検討していると回答しており、この2024年問題はトラックドライバーの中には大きな転換点となる人もいるのではないだろうか。

 勤務先の就業規則を見たことがある人は半数に達せず、「見たことがない」が56.0%となった。副業可否や、上限規制に関する社内規程や社内ルールなどを把握できておらず、また年次有給休暇の取得状況は、この1年で有給休暇を1日も取得していない人が37.0%もいた。

 調査のまとめとして、「トラックドライバーへの働き方改革を目的とした上限規制が逆にドライバーの生活や労働環境をひっ迫させてしまう可能性があり」、「働き方改革を物流業界で推進するためには現場における労働環境の改善と同時に従業員への就業規則の周知やガバナンス意識を向上させる重要性が一層高まっている」と指摘している。

参照: 株式会社KiteRa プレスリリース「物流の2024年問題に関する実態調査」

2023.12.18

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/