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No.4586 会計検査院、税金の徴収漏れ約2億4,000万円を指摘

● 令和4年度の税金のムダ遣いは約580億円

 会計検査院が公表した令和4年度決算検査報告によると、各省庁や政府関係機関などの税金のムダ遣いや不正支出、経理処理の不適切などを指摘したのは344件、580億2,214万円(327件分)だった。前年度に比べ、指摘件数は34件増加。前年度に引き続き、新型コロナ感染防止への対応として、検査官による実地検査が検査対象機関に配慮する中で、指摘件数は増加し、指摘金額では前年度の約455億円を大幅に上回った。

● 徴収不足は前年度から約8,000万円増加

 財務省に対しては、法令違反に当たる不当事項として、税金の徴収額の過不足2億4,086万円(うち過大300万円)が指摘された。検査の結果、55税務署において、納税者84人から税金を徴収するに当たり、徴収不足が85事項、2億3,785万円、徴収過大が1事項、300万円。前年度は、46署において徴収不足が72事項、1億6,062万円だったので、徴収不足は約8,000万円増加したことになる。昨年度、徴収過大は154万円だった。

● 法人税の徴収不足が全体の約57%を占める

 徴収が過不足だった86事項を税目別にみると、「法人税」が46事項で徴収不足が1億3,627万円と全体の約57%を占めて最も多く、以下、「申告所得税」22事項、同7,100万円、「消費税」13事項(うち過大1事項)、同2,377万円、「相続・贈与税」3事項、同415万円、「源泉所得税」1事項、同194万円などだった。これらの徴収過不足額については、会計検査院の指摘後、全て徴収決定・支払決定の処置がとられている。

● 法人税の徴収不足は「法人税額の特別控除」が最多

 法人税では、徴収不足46事項のうち、「法人税額の特別控除」が26件で最多、「交際費等の損金不算入」に関するものが7件を占めた。

 例えば、A社は、2019年4月から2020年3月までの事業年度分の申告で、当該事業年度の雇用者給与等支給額388億542万円が、前事業年度の比較雇用者給与等支給額363億7,868万円を上回るなどとして、雇用者給与等支給増加額24億2,674万円の15%相当額3億6,401万円を法人税額から控除していた。

 しかし、A社の前事業年度分の申告書に添付された明細書等によれば、雇用者給与等支給額から控除すべき適正な比較雇用者給与等支給額は364億8,473万円だった。そのため、適正な雇用者給与等支給増加額は23億2,069万円と算出され、法人税額の特別控除額はその15%相当額の3億4,810万円となり、1,590万円過大となっているのに、税務署はこれを見過ごしたため、法人税額1,590万円が徴収不足になっていた。

参考: 令和4年度 決算検査報告の概要 財務省に対する不当事項(会計検査院)

2023.12.04

浅野 宗玄(あさの・むねはる)

株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php