お客様のお役に立つ JAIFA学習帖

  • サイト内検索:

No.4581 睡眠不足感が大きくなるほどうつ傾向・不安感は上昇

● 睡眠不足は過労死につながる!?

 政府は、「令和4年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(令和5年版過労死等防止対策白書)を10月13日に閣議決定し、厚生労働省のサイトで公表した。

 全国の自営業者、会社役員を含む就業者9,852人及び3,103事業場から回答を得たアンケート調査によると、理想の睡眠時間は最多が「7~8時間未満」の45.4%、次いで「6~7時間未満」の28.9%であったのに対し、実際の睡眠時間は最多が「5~6時間未満」の35.5%、次いで「6~7時間未満」の35.2%であった。理想と実際の睡眠時間を比較して、理想の睡眠時間より「1時間不足」は39.6%、「2時間不足」は21.3%も回答があった。

 調査によると、理想と実際の睡眠時間の乖離している時間――睡眠の不足感が大きくなればなるほどうつ傾向・不安感が上昇するだけでなく、主観的幸福感も低くなる傾向があることが明らかになった。なお、理想の睡眠時間より「5時間不足」と回答した人の38.5%が「重度のうつ病・不安障害の疑い」ありと判定されている。

 1週間当たりの実労働時間別に理想と実際の睡眠時間の乖離している時間をみると、労働時間が長いほど乖離時間が大きくなることが明らかになった。週労働時間が60時間以上の場合、「理想の睡眠時間以上睡眠がとれている」のは22.3%、それに対して理想の睡眠時間より「1時間不足」は34.4%、「2時間不足」は27.9%、「3時間不足」は9.7%、「4時間不足」は4.8%、「5時間不足」は1.0%という結果であった。また、労働時間が長いほど、健診数値(BMI、血圧、LDLコレステロール)、心理的ストレス反応、起床時の疲労感、昼間の眠気等が悪化する傾向があると白書は分析している。

● 不安・悩みの内容、「仕事の量」がトップ

 仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者(以下「仕事でストレス等のある労働者」という)の割合は82.2%(令和4年時点)であった。このような現状に対し「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、令和9年までに仕事でストレス等のある労働者の割合を50%未満に改善することを目標に取り組んでいる。

 仕事でストレス等のある労働者にその内容を尋ねると、「仕事の量」(36.3%)、「仕事の失敗、責任の発生等」(35.9%)、「仕事の質」(27.1%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(26.2%)が上位を占めた。「仕事の量」に関しては、労働時間の増加に直接つながるところでもあり、早急に適切な対応が求められるところである。

● 50人以上の事業場でストレスチェックを実施していないのは問題

 事業場の規模別に直近1年間の定期健康診断の実施状況をみると、「全員に対して実施した」及び「一部に対して実施した」を合わせた割合はいずれの規模でも90%以上あり、おおむね定期健康診断は実施されている。しかし、「10人未満」規模では3.8%が「実施しておらず今後も実施予定はない」と回答しているのが気がかりである。

 また、事業場の規模別に直近1年間のストレスチェックの実施状況をみると、規模が大きいほど実施率は高くなる傾向はあるものの、法律で義務づけられている50人以上の事業場においても、「実施しておらず今後も実施予定はない」という回答が、「50~99人」規模で17.8%、「100~299人」規模で7.2%、「300人以上」規模で13.8%もあり、これは大きな問題である。

 厚生労働省は、過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に向け、過労死等防止対策に取り組んでいる。各企業も一体となって今回の過労死等防止対策白書に記載されている様々な有意義な研究や事例からヒントを得て、基本的なマネジメント体制及び職場環境を見直すきっかけとしたいところだ。

参照: 厚生労働省 令和5年版過労死等防止対策白書

2023.11.27

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/