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No.4580 返済期間が最長50年の住宅ローン

 このところ、インターネット銀行や地方銀行などで、返済期間が最長50年の住宅ローンの取り扱いが目立ちます。いまなぜ50年なのか、その背景や抱える問題点を見てみます。

● 住宅価格の上昇が背景に?

 今夏、住信SBIネット銀行が、返済期間が最長50年の住宅ローンの取り扱いを開始しました。ネット銀行としては初の試みとのことです。

 近年、人件費や住宅資材の高騰、省エネ・高性能住宅の普及などにより、住宅価格は上昇傾向にあります。

 国土交通省が公表している、2023年6月時点の不動産価格指数(住宅)を見ると、2010年の平均を100とした場合、戸建ては116.9、マンションは191.4となっており、住宅価格の高騰を裏付けています。

 このような背景などから、住宅ローン借入者の毎月の返済負担を軽減することで、顧客のニーズに応えようという点が、50年ローン取り扱い開始の背景の一つとして考えられます。

 なお、住信SBIネット銀行では、返済期間35年超50年以内で借りる場合は、住宅ローンの適用金利に年0.15%が上乗せとなり、完済時年齢は80歳未満などの要件があります。

● 返済不能リスクと背中あわせの側面も

 返済期間50年で住宅ローンを借りるメリットとしては、同じ借入額であっても、返済期間が伸びることで毎月の返済額を抑えられることです。

 例えば、4,000万円を金利1%(元利均等・ボーナス時返済なし)で、35年と50年で借りた場合の毎月の返済額は、それぞれ約11.3万円、8.5万円と、50年で借りた方が毎月の返済額を約2.8万円弱減らすことができます。

 一方で、返済期間が伸びることは、利息が増えて総返済額の増加を招きます。先述の条件で借りたときの総返済額は、35年で約4,742万円、50年で約5,085万円と、総返済額は約343万円の増加になります(繰上げ返済せずに最終返済まで続けた場合)。

 住宅ローンは一般的に80歳未満で完済が求められるため、最長50年返済で借入れできるのは20歳代の人たちです。家計のキャッシュフローを考えた場合、長期間に渡ってローン返済を続けることは、予測不能な事態が起きた時の返済不能リスクを背負います。

 住宅ローンは、「借りられる額ではなく、最後まで確実に返済できる額」で借り入れするのが鉄則です。目先の返済額軽減に惑わされず、長期の家計を意識することが、返済期間の長い住宅ローンの借入れには、より一層求められることになりそうです。

参考: 不動産価格指数(国土交通省)

2023.11.27

高橋 浩史 (たかはし・ひろし)

FPライフレックス 代表(住まいと保険と資産管理 千葉支部)
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFPR
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社、百貨店、広告代理店などでグラフィックデザイナーとして20年間活動。
その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。
住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。
その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。

ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/