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No.4559 シニア層の採用に積極的な企業、3割にとどまる

● 就業希望のシニアは増えつつある

 株式会社リクルートの調査機関、ジョブズリサーチセンターは、「シニア層の就業実態・意識調査2023(企業編)」についてまとめ、5月に公表した。インターネットによる調査で、合計600社の人事・採用計画に関わっている方から回答を得ている。

 シニア層への採用意欲についてどのくらい積極的かという質問については、雇用形態(正社員、パ―ト・アルバイト、その他雇用形態)により多少の差はあるが、約3割が「積極的」と答えた(非常に積極的、やや積極的、どちらかといえば積極的の合計)。業種別に見ると、正社員とその他雇用形態では各種製造業、パート・アルバイトではフード、販売、サービス業で積極的の回答が比較的多かった。

 高齢化の進展とともに就業を希望するシニアが増え、また社会的にもシニア層が重要な働き手となりつつあるなか、シニアの就業を促進するためにはこのような調査結果は参考にしたいところである。

● 「求める人材像にあっていれば年齢は関係ない」という意見

 シニア層の採用に対して積極的な理由を聞くと、いずれの雇用形態でも「求める人材像にあっていれば、年齢は関係ないから」という回答が最も多かった(正社員63.7%、パ―ト・アルバイト48.5%、その他雇用形態50.0%、複数回答による)。また、「現在就業中のシニア層従業員が優秀なため」「専門的業務に対応するため」などの回答も比較的多かった。

 特に、現在就業中のシニア層従業員が優秀であれば、シニアの就業に対してある程度イメージもできるし、安心して採用できるというのは本音であろう。しかし、シニア層を雇用していない企業にとっては、「シニア」という従来イメージから敬遠してしまっているケースも少なからずあるのではないだろうか。

● 健康面、体力面の不安を解消できれば、採用意欲はアップする

 一方、シニア層の採用に対して積極的ではない理由を聞いたところ、「人員が充足しているため」「健康状態、体力が不安なため」「能力、スキルが不安なため」などの回答が上位に挙がった。また、「任せられる仕事内容がわからないため」「これまでも採用のターゲットとしていない、前例がないため」などと回答する企業も多く、まずはシニア層を雇用するうえでの不安を解消することが重要だ。特に健康面、体力面などは最も大事であるし、トラブルを避けるためにも会社側は採用時に詳細なヒアリングを行い、慎重に採用を進めていく必要がある。

 調査結果によると、シニア層を雇用したことで生まれた成果として、「適切な業務配分ができるようになった」(21.6%)、「業務効率、生産性の向上」(19.0%)、「従業員の定着による人件費の削減」(17.0%)、「シニアへのやりがいのある就業機会の提供」(16.0%)、「残業時間の減少」(13.2%)などが上位に挙がっており、シニア層雇用が人材不足や業務過多の解消につながっていることは明らかだ。シニア層に対する会社側のイメージが変わってくれば、もっと採用意欲が高まり、シニア層の活躍の場は増えてくるのではないだろうか。

参照: 株式会社リクルート ジョブズリサーチセンター 【基本報告書】シニア層の就業実態・意識調査2023(企業編)

2023.10.23

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/