No.4557 スモールM&Aでの、基本合意書と譲渡契約書
● 多くの場合、契約書は3回締結
M&Aは一般的に上記のような工程で進むことが多い。
上記を見て頂くと秘密保持契約書は文字通り情報漏洩を防ぐものと理解しやすいが、その他に「契約書」の締結が2回行われていることに疑問を感じる方も多いのではないだろうか。今回は譲渡企業と譲受企業の間で交わされる「基本合意書」と「譲渡契約書」にフォーカスして簡単にではあるがお伝えする。
● 基本合意書の目的
M&Aでは多くの場合、譲渡企業は自社事業の引継ぎを検討してくれる譲受希望企業をインターネットのマッチングサイトなど様々な方法で広く募集している。この時点では、数社と同時に情報交換や質問を重ねて、お互いの条件確認や疑問解消などを行っている。
※ 秘密保持契約書は上記の図をご参照頂きたい。
その後、譲渡企業が譲受希望企業を1社に絞り、互いに譲渡契約を結びたいと判断した場合に、【基本合意書】という契約書を締結する。
主な基本合意書を結ぶ目的は下記となる。
- 独占交渉権の付与とその期限の設定
⇒ 譲渡企業は基本合意書の締結後、他の譲受希望企業との情報交換などの交渉はその時点で停止となる。期限は1~2か月の間で設定されることが多い。 - 企業調査(デューデリジェンス)の実施権限と、それに対する譲渡企業の協力
- 両者が口頭にて基本的に合意した内容の確認
⇒ 譲渡対象物、譲渡価額、実施時期など。 - 譲渡企業の善良なる管理者としての注意義務
基本合意書は譲渡契約が確定したことを表すものではない。成約させなければならないという法的義務はない、とするのが一般的であるので、ご注意頂きたい。
● 譲渡契約書の記載項目一例
基本合意書を締結後、企業調査を経て、最終的な契約の【譲渡契約書】を締結する。
譲渡契約書は最終契約書とも呼ばれ、当事者の権利義務を規定する重要なものである。基本合意書に掲載されていて、互いに合意した事項はもちろん、企業調査時に新たに合意した内容なども漏れなく記載をする。
契約手法(株式譲渡や事業譲渡など)については今回割愛させて頂くが、基本的には共通して下記が記載されることが多い。
- 譲渡対象、譲渡時期、引渡書類・印鑑などの詳細明示
⇒ 所有株式数など譲渡対象となるものが何で、いつ譲渡するか - 譲渡価額、支払時期・方法
⇒ 代金がいくらで、いつどのような方法で支払うか - 経営者・役職員の処遇
⇒ 譲渡企業の経営者による引継ぎ期間や、従業員の雇用継続の努力義務等を設けてあるか - 表明保証条項
⇒ 譲渡企業の条項が厚くなる傾向があり、財産状況を正しく表示しているか、隠れ負債がないか、現在係争中・提起予定の訴訟などがないか、事業継続にあたり重大な契約の解除がないか、など記載されることが多い。 - クロージングの前提条件
⇒ クロージングまでに何を行う必要があるか - 競業避止義務
⇒ 譲渡後に競合する事業を行うことがどの程度禁止されているか - 契約の解除事由
⇒ どのような場合に契約を解除できるか - 損害の賠償・補填
- 秘密保持 など
経済産業省のホームページに、それぞれの契約書サンプルが掲載されているので、ご参考にご覧頂きたい。
2023.10.16
山崎 美穂(やまざき・みほ)
マネーコンシェルジュ税理士法人
栃木県出身。一般企業で経理・総務を経験し、現法人へ。企業で役立つ支援策・補助金等の最新情報を収集、お役立ち情報としてSNSやホームページで発信中。
趣味は釣りと食べ歩き。
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