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No.4555 もし火元になってしまったら…どうなるの?

● もし火元になってしまったら?

 先日、パチンコ店の立体駐車場で火災が発生しました。火はおよそ4時間後に消し止められ、けが人はないものの、152台もの車が焼損した模様です。

 このような事故で、もし火元になってしまったら、被害者側から損害賠償請求を受けることはあるのでしょうか?この事故の原因などの詳細は現時点ではわかりませんが、一般論としては、故意や重過失がない限り損害賠償責任が発生することはなさそうです。それは、木造家屋の多い日本では民法の特別法である失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)によって、故意や重過失がない時は、賠償責任を問われないことになっているからです。

 具体的には、失火によって他人の家に燃え移ったり、人を死傷させたりした場合であっても、失火者に故意や重過失がないと判断されれば、損害賠償責任を負わないとされています。「重過失」とは、「少し注意すれば事故が発生しなかったのに、あえて見過ごした」というような、ほとんど故意と同様と言えるような悪質なケースを指します。

● 自宅が火元になった場合、近隣への損害賠償責任がなくても大変なことになることが…

 この失火責任法は、自宅が火元になって近隣に燃え移ってしまった場合などにも適用されます。したがって、近隣のお宅への賠償責任は重過失がなければ問われません。

 ところが、それだけでは済まない時があります。それは、近隣のお宅が火災保険に入っていないか、入っていても十分な補償がない場合です。このような状況下では、近隣のお宅は火災保険を使って損害を十分に補てんすることができません。自己資金で手当てできなければ、修繕や再建に支障が出るおそれがあります。そうなると生活の立て直しも困難となります。

 このような状況に陥っている近隣の方々を尻目に、もし火元側が、自ら加入している火災保険で自宅を再建したとすると、どうでしょうか。加害者側が火災保険の保険金で再建された新居に住み生活を立て直す一方、被害者である近隣のお宅は焼失した自宅を前に途方に暮れるということにもなりかねません。

● そんな事態を避けるための特約とは?

 このような事態を避けるために、類焼損害を補償する火災保険の特約(類焼損害・見舞費用特約など)があります(保険会社によって名称が異なります)。この特約は、出火元の過失の有無を問わず、火災・破裂・爆発によって近隣が類焼した際の類焼先の被害を補償するものです。ただし、被害者側が火災保険等に加入していて保険金を受け取れる時は、その保険金で不足する金額がある場合に限り、この特約から支払われます。

 火災保険を契約する際には是非検討しておきたい特約です。また、既に火災保険に加入済の場合は、この特約の有無を確認してみましょう。そして、もしこの特約に加入していなければ追加(中途付帯)を検討してみてください。

2023.10.16

【参考情報】

生命保険の募集人の方は、上記のような損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります)。火災保険の話題からのアプローチトークも収録されています(第2章第6話落雷で給湯器やエアコンが壊れた!「建物」じゃなくても火災保険の対象になるの?)。

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水谷 力(みずたに・ちから)

株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/組織開発コンサルタント
大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。