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No.4554 医師の働き方改革

● 医師の勤務実態と問題点

 我が国は、誰もが安心して医療を受けられる医療制度を実現し、世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を達成しています。

 しかし、「令和元年 医師の勤務実態調査」によれば、調査の上位10%が年間時間外1,824時間換算となっており、我が国の医療は医師の長時間労働によって支えられているといえます。医療ニーズの変化や医療の高度化、少子化に伴う医療の担い手の減少などによって、今後ますます医師個人の負担が増加することが予想され、常勤医師の長時間労働の常態化は深刻な問題となっています。

 特に救急、産婦人科、外科や若手の医師は長時間労働の傾向が強く、また医療機関によっては、時間管理が客観的に行われていないなど、労務管理が不十分であったり、事務作業など医師でなくとも対応可能な業務を慣習的に行っているなど、医師が多くの業務を抱え込んでいる現状もあります。長時間労働による疲労の蓄積や睡眠不足は、ヒヤリハットや医療過誤の危険だけでなく、過労死の心配も生じます。

 医師が健康に働き続けることができる環境を整備することは、医師本人のみならず、患者・国民に対して医療の質・安全の確保、持続可能な医療提供体制を維持するうえで大変重要です。

 労務管理の徹底、労働時間の短縮による医師の健康の確保、すべての医療専門職それぞれが、自らの能力を活かし、より能動的に対応できるようにすること、質・安全が確保された医療を持続可能な形で患者に提供することを目指し、令和3年5月、医師の働き方改革推進のため「良質かつ適正な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が公布され、令和6年4月から、医師の時間外労働の上限規制が順次施行されます。

■令和6年4月施行 医師の働き方改革のポイント

● 医療機関勤務環境評価センターの設置

 医療機関が特例水準(B,C)の適用を受けるためには、「医師労働時間短縮計画(案)」などを作成し、評価センターによる評価を受けたうえで、都道府県に特例水準の指定申請を行い、指定を受ける必要があります。

 評価センターは、医療機関に勤務する医師の労働時間短縮のための取組の状況等について評価を行うこと及び労働時間の短縮のための取組について医療機関の管理者に対して必要な助言・指導を行うことにより、医師による良質かつ適切な医療の効率的な提供に資することを目的として、令和4年4月に厚生労働省から指定された日本医師会による組織です。

【参考】医師の働き方改革(厚生労働省)

2023.10.02

沖田 眞紀(おきた・まき)

特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。