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No.4524 「タワマン節税」防止に新しい評価額算定ルール導入

● 実勢価格の平均4割程度にとどまるマンションの評価額

 国税庁は、マンションの相続税評価額について、市場価格との乖離の実態を踏まえた上で適正化を検討していた有識者会議の見直し案を公表している。この見直しの背景には、マンションの評価額が実勢価格の平均4割程度にとどまることから、その評価額の低さを利用したいわゆる「マンション節税」や「タワマン節税」が富裕層を中心に広がっていたことがある。今回、相続税の新たな算定ルールを定め、その節税防止を狙う。

● 建物の効用・立地条件の反映が不十分なことが乖離の要因

 現行の相続等で取得した財産の時価(マンション(一室)の評価額)は、不動産鑑定価格や売却価格が通常不明であることから、建物(区分所有建物)の固定資産評価額と路線価等から計算した敷地(敷地利用権)の価額の合計額としている。しかし、建物の市場価格は、建物の総階数やマンション一室の所在階、築年数が考慮されており、これらの反映が不十分だと、評価額が市場価格に比べて低くなるケースがある。

 また、マンション一室を所有するための敷地利用権は、共有持分で按分した面積に平米単価を乗じて評価されるが、この面積は一般的に高層マンションほどより細分化され狭小となるため、このように敷地持分が狭小なケースは立地条件の良好な場所でも、評価額が市場価格に比べて低くなる。このように、建物の効用の反映や立地条件の反映が不十分なことが、マンションの相続税評価額と実勢価格の乖離の要因となっている。

● 市場価格の「60%」に達するまで評価額を補正

 そこで、見直し案では、相続税評価額が市場価格と乖離する要因となっている「築年数」、「総階数(総階数指数)」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づいて、評価額を補正する方向で通達の整備を行う。具体的には、これら4指数に基づき統計的手法により乖離率を予測し、その結果、評価額が市場価格理論値の「60%」(一戸建ての評価の現状を踏まえたもの)に達しない場合は「60%」に達するまで評価額を補正することとする。

 見直しのイメージは、(1)一戸建ての物件とのバランスも考慮して、相続税評価額が市場価格理論値の60%未満となっているもの(乖離率1.67倍を超えるもの)について、市場価格理論値の60%(乖離率1.67倍)になるよう評価額を補正、(2)評価水準60%~100%は補正しない(現行の相続税評価額×1.0)、(3)評価水準100%超のものは100%となるよう評価額を減額する。2024年1月以後の相続等・贈与により取得した財産への適用を目指す。

参考: 「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」(国税庁)

2023.08.14

浅野 宗玄(あさの・むねはる)

株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php