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No.4431 給与のデジタル払い、春以降にスタート

● キャッシュレス決済の普及を受けて、給与もデジタル化へ

 賃金の支払方法については、通貨(現金)払いが原則となっている。法令上は労働者の同意を得た場合には、銀行等金融機関の預貯金口座へ振込み等ができるわけだが、ほとんどの会社は従業員に口座振込みの申出書を提出してもらうことによって、銀行等へ給与の振込みを行っているのが現状だ。

 給与の支払いについては、近年、キャッシュレス決済の普及等もあり支払方法の多様化を望む声があがっていた。昨年11月に労働基準法施行規則の一部が改正され、使用者は労働者の同意を得た場合、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払(いわゆる賃金のデジタル払い)ができることとなった。

 施行は今年(2023年)の4月からになるが、資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行うことができるようになるのが4月からということで、実際に運用がスタートするのはそこから審査に数カ月かかった後とされている。今回は厚生労働省のサイトも参考にしながら給与のデジタル払いの概要についてお届けする。

● 労使協定の締結が必要

 資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行った後、厚生労働省が審査を行い、基準を満たしている場合にはその事業者は指定される。会社が賃金のデジタル払いを行う場合には、利用する指定資金移動業者などを内容とする労使協定を締結する必要がある。

 従業員は給与のデジタル払いの留意事項の説明を聞き、デジタル払いを希望する場合には、会社に同意書を提出することが必要となる。この同意書に記載する支払開始希望時期以降に給与を指定資金移動業者の口座で受け取ることができる。

 もちろん今までどおり銀行等への振込みを希望する人はそのままでよく、会社は希望しない従業員に強制してはならない。また、給与の一部は指定資金移動業者の口座で、残りは銀行等口座で受け取ることも可能となる。

● デジタル払いに対応しないというのもあり

 そもそも会社がデジタル払い導入を検討しないという選択肢もある。当初は様子見のところも多いのではないだろうか。お金に関係するところなのでトラブルがあってはならないし、指定資金移動業者が破産したときの対応など丁寧な説明が求められるので、導入までにはさまざまな準備が必要と思われ、会社側も率先して導入することにメリットを感じないのではないかと思う。

 しかしながら、デジタル払い(ペイ払い)は今後ますます拡大する見込みであり、従業員から自社の導入予定などの問い合わせや相談も増えてくると思われる。例えば最初は賞与だけ導入するなど、福利厚生の一環として検討してもよいのではないだろうか。

参照:厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」

2023.02.20

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/