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No.4420 NISA抜本拡充など令和5年度税制改正大綱を閣議決定

 政府は12月23日、令和5年度税制改正大綱を閣議決定した。税制改正大綱では成長と分配の好循環を実現するため、個人投資家の優遇制度「NISA」の抜本的な拡充・恒久化を行うほか、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化に向けた具体的な方策、資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築、インボイス制度の円滑な実施のための新たな税制上の措置、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置などが盛り込まれている。

● 「NISA」の抜本的な拡充・恒久化

 NISAは若年期から高齢期に至るまで、長期・積み立て・分散投資による継続的な資産形成を行えるよう、令和6年1月から非課税保有期間を無期限化する。つみたて型は年間の投資枠を3倍の120万円に、一般型は「成長投資枠」に衣替えし、年間投資水準を現行の2倍となる240万円に拡大し、年間投資上限額は合計360万円となる。生涯にわたる非課税限度額も現行の800万円から1,800万円に拡大する。

● スタートアップ支援の抜本的強化

 スタートアップ支援については、保有株式の譲渡益を元手に創業者が創業した場合や、エンジェル投資家がプレシード・シード期のスタートアップに再投資した際、再投資分につき株式譲渡益に課税しない制度を創設。その上限額については、米国のQSBSに係る株式譲渡益の非課税措置の規模(約13.5億円)を上回る20億円とする。また、プレシード・シード期のスタートアップへの投資を一層呼び込むため、エンジェル税制の要件緩和も行う。

● 相続時精算課税制度は110万円まで申告不要

 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築では、相続財産に加算される生前贈与の加算期間を現行の相続開始前3年以内から「7年以内」に延長し、延長した期間(4年間)に受けた贈与のうち一定額については、相続財産に加算しない。暦年課税との選択制として導入された相続時精算課税制度に求められる煩雑な税申告を、110万円まで申告不要とし、税務署への届け出などの手間を軽減して制度の使い勝手をよくする。

● インボイス発行事業者となる免税事業者の負担を軽減

 インボイス制度については、これまで免税事業者だった者がインボイス発行事業者となった場合の納税額を売上税額の2割に軽減する3年間の負担軽減措置を講じ、納税額の激変緩和を図る。これにより、簡易課税制度の適用を受ける場合に比べ、さらに事務負担が軽減される。また、一定規模以下の事業者の行う少額取引につき、帳簿のみで仕入れ税額控除を可能とする6年間の事務負担軽減策を行う。

● 防衛力強化の財源は法人税など3税で確保

 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置については、法人税に税率4~4.5%の新たな付加税を課し、中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除する。年間所得2,400万円以下の中小法人は課税対象から除外され、約96%の中小企業は対象外となる。また、所得税に新たに税率1%の付加税を課し、復興特別所得税の税率を1%引き下げる。たばこ税についても1本当たり3円の引上げを段階的に実施する。

参考: 「令和5年度税制改正の大綱」

2023.01.30

浅野 宗玄(あさの・むねはる)

株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php