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No.4274 コロナ禍でも外国人介護従事者は急増

● 全体の外国人労働者数は一気に落ち込んだが…

 2022年2月4日、厚労省で「外国人雇用対策の在り方に関する検討会」が開催された。そこで示されたデータから、コロナ禍における外国人労働者の状況が浮かび上がる。

 2015~2020年にかけて、日本で就労している外国人労働者数は「90万8,000人→172万4,000人」とほぼ倍増した。その伸びは、1年あたりにすると約16万人。ところが、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020~2021年の1年間で、伸びは3,000人台に落ち込んだ。コロナ禍での入国制限が影響したことは、言うまでもない。

 そうした中、コロナ禍でも外国人労働人口が急増しているのが、介護・福祉事業の分野だ。2020年と2021年の各10月末時点で同分野の労働者数を比較すると、「2万9,838人→4万1,189人」と1万1,351人の増加(伸び率にして38%)。先の外国人労働者全体の数字と比較して、その伸びの大きさが分かる。

 介護・福祉分野といえば、他業界と比較しての賃金の低さなどから恒常的な従事者不足が社会問題となり、加えて、コロナ禍で重症者しやすい人への対応に追われるなど労働環境の厳しさも増している。そうした背景があるにもかかわらず、入国がままならない状況下でこれだけの伸びが認められるのはなぜか。

● 介護分野での外国人就労の枠組みを整理すると……

 まず、介護分野における、外国人労働者の受入れのしくみに焦点を当ててみよう。入国後に一定の研修・講習は受けるものの、比較的短期間で就労に入るケースは、技能実習やEPA(経済連携協定)による特定活動、そして2019年4月から導入された特定技能(1号)がある(技能実習では「実習」となるが、日本人と同等以上の労働報酬が義務づけられており、厚労省のデータ上では労働者として扱われている)。なお、技能実習で入国3年後の検定をクリアすることで、特定技能1号に移ることができるというしくみもある。

 一方で、入国後に一定期間「介護福祉士養成校」に就学するというパターンがある。具体的には、留学生としての受入れや先のEPAにおける「就学コース」が該当する。この場合、卒業後に介護福祉士を取得することができる。ただし、「卒業だけ」の場合は5年間の経過措置が設けられている。5年の間に介護福祉士の国家試験に合格すれば期間を超えても介護福祉士として活動できる(なお、国家試験合格せずとも5年間だけ介護福祉士となれる特例は2026年度卒業者まで)。

● 在留資格獲得に向けた意欲は高いが、将来は?

 上記の介護福祉士養成校の就学期間は2年以上。つまり、入国から少なくとも2年たってから、介護福祉士として現場に就労することになる。このタイムラグを想定すると、冒頭で述べた「コロナ禍でも介護分野の外国人労働者が急増した」ことの説明はつく。

 ちなみに、介護福祉士資格が取得できると「介護」としての在留資格が獲得できる。この在留資格とは、出入国管理法において「就労目的で在留が認められる者」を指し、在留期間更新の制限はなく、家族(配偶者や子供)の帯同が可能となる。当事者としては、コロナ禍でも修学に取り組んで資格取得を目指すといった意欲は極めて高いと言える。

 問題は、先述したように「卒業だけで資格取得不要」の期間が限定され、試験免除となる猶予期間もあと4年(卒業時期から逆算して対象者の入学は遅くてもあと2年)となっていることだ。その時に、介護労働者を目指す外国人の入国意欲がどうなるか。日本の労働力人口が減少の一途をたどる中、我が国の介護資源の将来を左右する大きなポイントとなる。

参考:
 厚生労働省『外国人介護人材受入れの仕組み』
 厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)』
 厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末現在)』

2022.04.04

田中 元(たなか・はじめ)

 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『2018年度 改正介護保険のポイントがひと目でわかる本』『《全図解》ケアマネ&介護リーダーのための「多職種連携」がうまくいくルールとマナー』(ぱる出版)など多数。

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