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No.4262 令和2年分国外財産調書、総財産額は約4兆円

 各年の12月31日において価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を保有する場合には、その翌年の3月15日までに、その国外財産の種類、数量および価額やその他の必要な事項を記載した「国外財産調書」を所轄税務署長に提出することが義務づけられている。このほど、令和2年分の国外財産調書の提出状況が国税庁から公表されたので、その内容について見てみたい。

● 東京局への提出件数が全体の6割強、財産額は7割を超える

 このたび公表された「令和2年分の国外財産調書の提出状況について」では、令和3年6月末までの提出分(提出期限は4月15日。コロナ感染防止対応のため、期限が1カ月延長された)を集計した結果がまとめられているが、それによると総提出件数は11,331件で、そのうち東京局が7,216件と全体の63.7%を占めている(2位は大阪局の1,663件、14.7%)。記載された国外財産の価額の総財産額は、4兆1,465億円で、東京局が3兆161億円とこちらは全体の72.7%を占めている(2位は大阪局の5,737億円、13.8%)ということであり、東京局管内に提出が集中している。財産の種類別に見てみると、有価証券が2兆1,225億円で全体の51.2%を占め、続いて預貯金(7,208億円、17.4%)、建物(4,523億円、10.9%)と続いている。

 なお、前述のとおり、各年に12月31日現在の財産保有状況を報告することとなるのであるが、相続開始の日の属する年(相続開始年)分の国外財産調書については、その相続または遺贈に取得した国外財産(相続国外財産)の記載はしなくてよいこととされており、国外財産調書提出要否の判定対象からも除外される(令和2年分以降)。もちろん、相続国外財産が翌年以降も国外財産調書への記載の対象外になるという訳ではない。相続開始年において相続や遺贈で取得した国外財産を翌年の12月31日現在でも保有している場合には提出要否の判定対象に含まれ、調書への記載も必要となる。

● 国外財産調書制度の趣旨と加算税の取扱い

 国外財産調書制度は、近年、国外財産の保有が増加傾向にある中で、国外財産に係る所得税および復興特別所得税(以降、所得税等)や相続税の課税適正化を目的に創設されて2014年1月に施行された(初回の調書は2013年分から)。制度の適正な運営によって国外財産に係る情報を的確に把握するために、国外財産調書を規定通りに提出しているかどうかなどにより、加算税の特例措置(軽減措置・加重措置)が設けられている。

(1) 国外財産調書を提出期限内に提出した場合の加算税の軽減措置
 国外財産調書に記載がある国外財産に係る所得税等や相続税についての申告漏れがあった場合の過少申告加算税や無申告加算税については税率が5%軽減される。

(2) 国外財産調書の提出がない場合の加算税の加重措置
 国外財産調書が提出期限内に提出されていない、または期限内に提出されても記載すべき国外財産の記載がない場合の過少申告加算税や無申告加算税については税率が5%加重される。

(3) 国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示や提出がない場合の加算税の軽減措置または加重措置の特例
 国外財産に係る所得税や相続税の調査に関して修正申告等があり、加算税(過少申告加算税・無申告加算税)の適用がある人が、その修正申告等の日より前に国外財産調書に記載すべき国外財産に関わる所定の書類の提示や提出を求められた際に、定められた日までの提示や提出がなければ、上記(1)の軽減措置は適用対象外となり、(2)の加重措置については加算割合がさらに大きくなる(5%→10%)。

(4) 正当な理由のない国外財産調書の不提出等に対する罰則
 正当な理由のない期限内不提出や虚偽記載の場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される場合がある。

 以上のような取扱いが定められているため、遅滞や洩れのない対応を心がける必要がある。

参考:令和2年分の国外財産調書の提出状況について(令和4年2月 国税庁)

2022.03.07
(セールス手帖社 堀 雅哉)