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No.4259 「仮名加工情報」を新設、ビッグデータ等での利活用促進

● 個人情報の保護と利活用の両立を図る

 2020年6月に公布された改正個人情報保護法がいよいよ今年の4月1日から施行されますが、皆さんの事業所では準備はお済みでしょうか。

 4月を目前にして、「個人情報保護法」や「ガイドライン」などを見聞きする機会も多いと思います。2003年の同法制定以降、3年ごとに制度が見直されてきましたが、今回はとくに大きな改正となります。

 この法律は国の行政機関である“個人情報保護委員会”がとりまとめていますが、改正の目的として、全体を俯瞰した共通の視点を示しています。そのうちのひとつを「保護と利用のバランス」とし、「保護」ばかりに偏らず適切に「利用」することにも着眼し、「平成27年改正法で特に重視された保護と利用のバランスをとることの必要性は、引き続き重要であり、個人情報や個人に関連する情報を巡る技術革新の成果が、経済成長等と個人の権利利益の保護との両面で行き渡るような制度を目指すことが重要である」(「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直し 制度改正大綱」より)とし、データの利活用を促進する観点から、「仮名加工情報」が新設されました。

 旧法では、事業者が自社内部で利用するために個人情報を加工して個人を特定できない情報に変換した場合でも、変換後の情報も個人情報に該当するため、利用目的の特定、目的外利用の禁止、取得時の利用目的の公表、データ内容の正確性の確保などの対応をしなければならず、せっかくの情報が宝の持ち腐れになっていました。それが今回の改正によって個人データの利活用促進を目的に「仮名加工情報」が新設され、事業者の義務が緩和されることになりました。

● 所定の加工を施したデータなら本人同意なくても利用可能に

 「仮名加工情報」とは、個人情報を「他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないよう加工して得られる個人に関する情報」と定義されています。例えば以下のような加工を施したものになります。

●個人情報

取引ID 会員ID 氏名 日時 支店名 商品ID 商品名 数量 価格 年齢
00001 03524 佐藤一男 2022/2/21 東京店 SK13 雑誌 3,500 54
00002 16957 鈴木次郎 2022/2/21 大阪店 HM05 地図 9,900 36


●仮名加工情報

取引ID 会員ID 氏名 日時 支店名 商品ID 商品名 数量 価格 年齢
00001 03524 DEF 2022/2/21 東京店 SK13 雑誌 3,500 54
00002 16957 JKL 2022/2/21 大阪店 HM05 地図 9,900 36

 典型的な例としては、購買履歴情報の購入者の氏名を上記のような仮IDや黒塗りに置き換えているような場合が当たります。仮名加工情報は、本人の同意なく利用目的を変更することが可能で、漏えい等の発生時に個人情報保護委員会への報告や本人への通知が不要となるほか、本人からの開示や利用停止等の請求対象からも除かれます。利用目的は公表する必要はありますが、緩和されたことで企業等でのデータ分析などの利活用が期待されます。

参照: 個人情報保護委員会「マンガで学ぶ個人情報保護法第11話 改正法編⑤ 仮名加工情報とは?」

2022.03.07

半田 美波(はんだ・みなみ)

社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。