No.4258 「パワハラ防止措置」令和4年4月から中小企業も義務化されます
職場におけるハラスメントは、健全な職場環境を害し、生産性の低下、退職や休職の原因となり、大きな社会問題となっています。令和2年6月よりハラスメント防止措置が強化され、セクハラ・マタハラ防止措置は既に義務化されましたが、パワハラ防止措置については、これまで中小企業は努力義務となっていました。この度、令和4年4月から中小企業のパワハラ防止措置についても義務化されることとなり、中小企業事業主には、早めの対応とパワハラについての正しい理解がますます求められます。
● 「職場におけるパワーハラスメント」の3要素
① 優越的な関係を背景とした言動
業務を遂行するにあたって、抵抗または拒絶できない関係性を背景として行われるもの。上司が部下にのみならず、同僚、部下から上司に対しての場合も含まれます。
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
社会通念に照らし、明らかに業務上必要性がない、またはその態様が相当でないもの。客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。
③ 労働者の就業環境が害される
身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなり、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業上看過できない程度の支障が生じること。この判断は「平均的な労働者の感じ方」すなわち同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が同程度の支障が生じたと感じるものかどうかが基準となります。
● 必ず講じなければならないパワハラ防止措置(義務)
◆事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
- パワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する
- 行為者に対し厳正対処する旨の方針、対処内容を就業規則等に規定し、労働者に周知・啓発する
◆相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
- 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにする
◆職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認する
- 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う(事実確認ができた場合)
- 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行う
- 再発防止に向けた措置を講ずる(事実確認ができなかった場合も含む)
◆そのほか併せて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する
- 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する(労働者が相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることは、法律上禁止されています)
参照:厚生省
パワーハラスメント防止措置が中小企業の事業主にも義務化されます
職場におけるパワーハラスメント対策が事業者の義務になりました!
2022.03.01
沖田 眞紀(おきた・まき)
特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス
千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。