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No.4255 「シフト制」労働者の雇用管理留意事項

● シフト制で働く労働者と企業のトラブルは多い

 労働契約を締結する際には原則として労働日や労働時間を決めて働くことになるわけだが、会社側も、人手不足や労働者のニーズの多様化のほかに、例えば月の後半が忙しい現場、季節的な需要の繁閑への対処等を考慮すると、パートタイマーやアルバイトを中心に、労働日や労働時間を一定期間ごとに調整し、特定するような働き方を採用している。

 このため、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態で働く人が一定数いることは確かである。このような働き方をいわゆる「シフト制」というわけだが、導入している企業は結構多く、なかにはトラブルになることもあり、問題となっている。

 厚生労働省はこのような現状を踏まえ、「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を1月に公表したので、ポイントをお伝えする。

● 「シフトによる」という記載だけでは不可の場合も

 シフト制で労働契約を締結する場合であっても、労働条件の明示は労働基準法に定めるとおりで、労働者に対して必ず明示しなければならない事項が以下のとおり決まっている。

◆ 書面で交付しなければならない事項(労働者の希望により電子的な方法も可能)
 契約期間/期間の定めがある契約を更新する場合の基準/就業場所、従事する業務/始業・終業時刻、休憩、休日など/賃金の決定方法、支払い時期など/退職(解雇の事由を含む)

◆ 口頭でも可能な事項
 昇給

 また、定めをした場合に明示しなければならない事項が以下のとおり決まっている。

 退職手当/賞与など/食費、作業用品などの負担/安全衛生/職業訓練/災害補償など/表彰や制裁/休職

 その中でも特に留意すべき事項としては、労働契約の締結時点で、すでに始業と終業の時刻が確定している日については、労働条件通知書などに単に「シフトによる」と記載するだけでは不足であり、労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて労働者に交付する必要がある。休日についても、具体的な曜日等が確定していない場合でも、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記しないとならない。

● 決定したシフトの通知期限などは明確に

 上記の必ず明示しなければならない事項に加えて、トラブルを防止する観点から、シフト制労働契約では、シフトの作成・変更・設定などについても労使で話し合ってルールを定めておく必要がある。

 もちろんシフト作成・変更のルールは、就業規則等で一律に定めることでもかまわないが、労働契約書を締結した際に記載しておくほうがわかりやすい。特に本人の希望勤務日時の提出期限、決定したシフトの通知期限、そして急にシフトに入れなくなった際の変更方法などはきちんと明記しておきたい。

 最後に、シフトの内容については労働者の希望に応じて、下記のような形で記録に残し、合意しておくこともトラブルを避けるための有効策の一つとなるので参考にしてもらいたい。

■ 一定の期間中に労働日が設定される最大の日数、時間数、時間帯
 例:毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する
■ 一定の期間中の目安となる労働日数、労働時間数
 例:1か月○日程度勤務/1週間あたり平均○時間勤務

参照: 厚生労働省 いわゆる「シフト制」について

2022.03.01

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/