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No.4166 国税の滞納残高は22年ぶり増加の8,286億円

● 新型コロナ対策の影響で新規発生滞納額が5年ぶりに増加

 国税庁がこのほど公表した令和2年度租税滞納状況によると、今年3月末時点での法人税や消費税など国税の滞納残高が22年ぶりに増加したことが明らかになった。これは、新型コロナウイルス感染症の経済対策で特例猶予制度が適用され、滞納の新規発生が抑えられていた分が、猶予期限を過ぎて上積みされたことなどが要因である。新規発生滞納額は前年度に比べ7.0%増の5,916億円と5年ぶりに増加した。

 その上、新型コロナウイルス感染症の影響による納税困難者への猶予制度の適用を最優先に取り組んだことから、整理済額が5,184億円(前年度比▲14.9%減)と新規発生滞納額を大きく下回ったため、今年3月末時点での滞納残高は9.7%増の8,286億円と22年ぶりに増加した。ただし、今年3月までの1年間(令和2年度)に発生した新規滞納額(5,916億円)は、最も新規滞納発生額の多かった平成4年度(1兆8,903億円)と比べると約31%となっている。また、令和2年度の滞納発生割合(新規発生滞納額/徴収決定済額)は前年度と同様の0.9%となった。滞納発生割合は平成16年度以降、17年連続で2%を下回っている。0.9%という数値は国税庁発足以来、最も低い割合だ。

● 消費税の新規発生滞納額も5年ぶりに増加

 この結果、滞納残高はピークの平成10年度(2兆8,149億円)の約29%まで減少している。税目別にみると、消費税は新規発生滞納額が前年度比7.9%増の3,456億円と5年ぶりに増加し、全体の約58%を占める。税目別では16年連続で消費税の割合が最多となっている。一方で、整理済額が2,879億円と下回ったため、滞納残高は21.6%増の3,245億円と、21年ぶりに増加した。

 国税庁は、(1)新規滞納に関しては、全国の国税局(所)に設置している「集中電話催告センター室」での整理、(2)処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となって訴訟を提起して整理、(3)財産を隠ぺいして滞納処分を免れる案件については、国税徴収法の「滞納処分免脱罪」による告発で整理することで、効果的・効率的に処理している。

 こうした厳正・的確な滞納整理を実施しているにもかかわらず、今回は新型コロナの影響という特殊要因により滞納残高は22年ぶりに増加したわけだが、消費税が新規発生滞納額全体の6割近くを占めることから、消費税の滞納は全体の滞納額に影響する。令和2年度の消費税新規発生滞納額は5年ぶりに増加し、滞納残高全体の増加の要因とみられる。なお、令和2年4月30日に施行された「納税の猶予制度の特例」を適用中の国税は、滞納に含まれない。

参考資料: 国税庁「令和2年度租税滞納状況」

2021.09.01

浅野 宗玄(あさの・むねはる)

株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
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http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php