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No.4165 健康保険の傷病手当金、来年1月から支給期間を通算化

● 1年6カ月の期間の考え方が変わる

 2021年の通常国会では人事労務関連に関する法改正がたくさん行われた。育児介護休業法の改正及び厚生年金・健康保険法の改正は特に重要であり、中小企業の経営者及び人事担当者はよく内容を理解しておきたいところだ。そんな中でも健康保険の傷病手当金の支給期間の通算化は大きな改正事項の1つであり、対象となる従業員にとっては影響があるところなので詳細を理解してもらいたいのでここでまとめておく。

 傷病手当金については、まずは基本の要件を再確認しておいたほうがいいだろう。健康保険の傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガの療養のために休業しており、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったことなど一定の要件を満たしたときに支給される。

 支給される期間は、支給が開始された日から起算して最長1年6カ月となっており、これは1年6カ月分支給されるということではなく、1年6カ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も通算して1年6カ月となっている。

 今回の改正により、2022年1月から健康保険の傷病手当金について、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるよう支給期間の通算化を行うこととなった。

 すなわち、従業員にとってはメリットのある改正になるので会社側も変更になった箇所をよく理解し、従業員にアナウンスするとともに正しい説明をし、手続きする際にも間違えないようにしたい。

● 病気治療と仕事の両立の難しさ

 病気治療と仕事の両立の難しさは、従業員本人だけでなく会社も感じているところである。今回の健康保険の傷病手当金の支給期間の通算化により、従業員には利用しやすくなるのは嬉しい話である。

 厚生労働省の資料によると2013年度以降、協会けんぽ・健康保険組合の支給金額は増加傾向にあり、傷病手当金の役割は重要であることは確かであるが、このような制度面だけでなく、当然会社側の支援が不可欠である。会社は病気治療しながら仕事をする従業員に対してどのような支援ができるのかあらためて考えてみる必要があるのではないか。

参照:厚生労働省 第127回社会保障審議会医療保険部会(ペーパレス) 資料

2021.09.01

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/