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No.4160 年金制度改正の概要 -令和2年法律第40号-

 多様化する社会、長期化する高齢期に対する経済基盤の充実を図るため、令和2年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立、同6月5日に公布されています。多くは令和4年4月1日施行ですが、すでに施行されている改正もありますのでお知らせいたします。

● <年金生活者支援給付制度における所得・世帯情報の照会対象者の見直し> 公布日より施行

 年金生活者支援給付金の支給要件判定のための所得・世帯情報の調査は、既存の支給対象者のみに限定して行われていたため、新たに支給対象となりうる方について、請求漏れとなる可能性がありましたが、今回、支給要件に該当する可能性のある方々に対し、簡易な請求書が送付可能と改正されました。毎年6月ごろに市町村税の課税所得が確定することから、7月にデータ収集、8月に判定処理を行うこととし、所得情報の切替時期を8月~翌年7月から、10月~翌年9月に変更することとなりました(ただし、市町村の周知期間を考慮し、令和3年度施行となります)。

● <児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直し> 令和3年3月1日より施行

 ひとり親の障害年金受給者は、これまでの制度では、障害年金額が児童扶養手当額を上回ると児童扶養手当を受給できませんでした。このため、障害年金の受給者について、併給の方法を見直し、児童扶養手当の額と障害年金の子の加算部分の額との差額を受給できるよう、改正されました。

● <未婚のひとり親等の申請全額免除基準への追加> 令和3年4月1日より施行

 国民年金保険料の申請全額免除基準は、個人住民税非課税基準に準拠している中で、令和2年度税制改正大綱における『未婚のひとり親等に対する税制上の措置』に対応できるようにするため、政令委任の規定を設けることとされました。

 改正前: 地方税法に定める障害者・寡婦
 改正後: 地方税法に定める障害者・寡婦その他の市町村税が課されないものとして政令で定める者

● <脱退一時金制度の見直し> 令和3年4月1日より施行

 脱退一時金とは、日本国籍を有しない方が、国民年金、厚生年金保険(共済組合等を含む)の被保険者(組合員等)資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求できる一時金で、短期滞在の外国人に対して、被保険者期間に応じて支給されています。これまで、被保険者期間の上限が3年となっていましたが、入国管理法改正により在留期間の上限が5年となったことなどから、現行の3年から5年に引き上げられました。

 その他、令和4年4月1日より施行予定の主な改正は下記のとおりです。

  1. 被用者保険の適用拡大(短時間労働者の適用対象企業規模要件の段階的引下げ等)
  2. 在職中の年金受給のあり方の見直し(老齢厚生年金)
  3. 年金受給開始時期の選択肢の拡大(現行60歳~70歳を60歳~75歳に拡大)
  4. 確定拠出年金の加入可能要件の見直し等(加入可能年齢の引上げ、中小企業向け制度対象範囲の拡大)

 また、『年金手帳』が廃止され、新たな施行後は『基礎年金番号通知書』に切り替わることとなっています(新たな取得の場合)。

【参照】 厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました

2021.08.23

沖田 眞紀(おきた・まき)

特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。