No.4157　職場で感染リスクを感じた労働者、医療業は8割弱

● 通勤時の感染リスク感じた地域のトップは、南関東の55％前後

　独立行政法人労働政策研究・研修機構は、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における労働者の働き方の実態に関する調査」結果を発表した。

　それによると、職場での新型コロナウイルス感染症の感染リスクを感じた労働者の割合が多かった業種を挙げると、「医療業」が77.3％、「社会保険・社会福祉・介護事業」が71.0％、「生活関連サービス業」が68.8％、「小売業」が66.5％、「宿泊・飲食サービス業」が61.8％、「銀行・保険業」が58.9％という順になった。またエリア別に調べた、通勤時に感染リスクを感じた割合をみると、調査対象期間を通じて、大都市圏である南関東（55％前後）、近畿（40％台後半）で相対的に高くなっていることが明らかになっている。

　会社側は労働者側の気持ちを理解したうえで、対応策としてテレワークや時差出勤などで感染リスクに対応しているが、テレワークそのものができない業種も多く、同様に通勤そのものも避けることができないことも多いので、ほかにリスクを軽減できる方法を探し出すことが課題となる。例えば都市部と郊外の中間にある事業所であれば、普段は認めていないマイカー通勤について、労働者本人の希望があって物理的に可能であればケースバイケースでマイカー通勤を認めるなど、柔軟な対応策も検討する必要があると思われる。

● 医療業の労働者、自身が迷惑行為を受けた割合は7.4％

　次に迷惑行為に関して企業調査と労働者調査の結果をみていきたいと思う。緊急事態宣言下（2020年４～５月）に、事業所に対していやがらせ、誹謗中傷などの迷惑行為を受けた経験がある企業は全体で3.4％であった。業種別にみると、「宿泊・飲食サービス業」が9.7％と最も高く、次いで「生活関連サービス業」の7.8％、「医療業」の5.2％、「社会保険・社会福祉・介護事業」の3.2％という順であった。なお、迷惑行為を受けた相手としては、「事業所のある地域の住民」が 45.9％と最も高く、次いで、「事業所の利用者」（36.8％）、「従業員の関係者」（15.7％）などとなっている。

　一方、「自身が迷惑行為を受けた経験がある」とする労働者の割合は全体で4.2％であった。業種別では、「医療業」（7.4％）、「生活関連サービス業」（7.4％）、「社会保険・社会福祉・介護事業」（5.4％）で相対的に高い。

　迷惑行為を受けた相手については、「顧客や利用者」（46.3％）が半数弱を占め、次いで、「勤め先の地域住民」（31.9％）、「自宅の地域住民」（20.1％）などとなっている。

　迷惑行為についてはなかなか企業側も対応に苦労しており、嫌がらせはニュースなどで報道されているもの以外でも悪質なものは多い。家族に医療従事者がいるだけで出勤を拒否されたという話も取り上げられていたが、そのようなことは許される行為ではない。

　自身が迷惑行為を受けることに加え家族への影響も大きいことから、そのような状況を放置しておくと労働者も働く意欲がなくなり、精神的な負担が増えてやむを得ず退職するケースも増えている。退職者が増えれば残った人員の負担が増えてしまい、負の連鎖はさらに進むことになる。企業としてできる限りの対策を実行し、労働者の意見をよく聞いて、通常以上にコミュニケーションをとって働きやすい環境になるよう企業側が最大限の努力をしてこの厳しいコロナ禍を乗り越えていっていただきたい。

参照：独立行政法人労働政策研究・研修機構「新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における労働者の働き方の実態に関する調査」結果（労働者調査・企業調査）

2021.08.10

庄司 英尚（しょうじ・ひでたか）

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所　代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所（現・アイウェーブ社労士事務所）を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

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