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No.4136 令和2年度消費税転嫁拒否行為で勧告5件、指導280件

● 今年3月までの累計では勧告が59件、指導が3439件

 公正取引委員会は6月上旬、令和2年度における消費税転嫁対策に関する取組み等の状況を公表した。それによると、公取委は、平成26年4月1日及び令和元年10月1日の消費税率の引上げを踏まえ、消費税の転嫁拒否等の行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組みと、転嫁拒否行為の未然防止のための取組みを進めてきたが、令和2年度は、勧告5件(前年度6件)、指導280件(同743件)の計285件の措置を講じている。

 平成25年10月から令和3年3月までの累計では、勧告が59件(うち大規模小売事業者13件)、指導が3439件(同189件)の計3498件にのぼる。

 また、令和2年度に勧告又は指導の対象となった大規模小売事業者などの特定事業者285件について、業種別に分類すると、「製造業」が49件(17.2%)と最も多く、「建設業」40件(14.0%)、「情報通信業」27件(9.5%)、「小売業」25件(8.8%)がこれに続いている。

● 特定事業者279名から総額7億3257万円の原状回復

 令和2年度の勧告・指導件数(285件)について行為類型別に件数を集計すると、「減額」が40件(構成比14.0%、前年度218件)、「買いたたき」が278件(同97.5%、同668件)、「本体価格での交渉の拒否」が3件(同1.1%、同21件)となっており、「役務利用又は利益提供の要請」は0件(同21件)だった。平成25年10月から令和3年3月までの累計では、「買いたたき」が3077件と約9割(88.0%)を占めている。

 令和2年度において、転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益については、特定事業者279名から、特定供給事業者4万6504名に対し、総額7億3257万円の原状回復が行われた。原状回復額に関し、転嫁拒否行為を行った特定事業者について、業種別にみると、「小売業」が最も多く(1億6873万円、23.0%)、「製造業」(1億296万円、14.1%)、「運輸業」(9085万円、12.4%)がこれに続いている。

 勧告の事例をみると、貨物自動車運送事業等を営むカトーレック(株)は令和2年12月10日に「買いたたき」により勧告されている。同社は、配送業務を委託している委託配送業者に対し、平成26年4月1日以後及び令和元年10月1日以後の当該業務の報酬単価又は月額報酬について、それぞれ消費税率引上げ分を上乗せせずに当該業務の委託料を支払っていた。原状回復額は特定供給事業者345名に対し、総額8018万4846円に及んだ。この他、勧告を受けた他4社(株式会社はるやまホールディングス、はるやま商事株式会社、株式会社さとふる、株式会社ダイサン)の事例も紹介されている。

参考資料: 公正取引委員会「令和2年度における消費税転嫁対策の取組と今後の取組について」

2021.06.28

浅野 宗玄(あさの・むねはる)

株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php