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No.4036 高年齢者雇用安定法改正、70歳までの就業確保が努力義務に

 現在、65歳までの安定した雇用の確保を目的とした「高齢者就業確保措置」を講じることが事業主に義務付けられていますが、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」改正により、70歳までの就業を確保することが、2021年4月より努力義務となります。

 年金は2022年4月から繰下げ受給可能年齢が75歳に繰下げ、高年齢雇用継続給付金は2025年度に60歳に到達する人から給付率を半減など、生活に関わる改正が予定されており、高年齢者のニーズに応じた「高齢者就業確保措置」を講じるよう、労使間で十分協議を行い、実施することが今後ますます求められることとなります。「高齢者就業確保措置」の具体的な措置及び留意事項は以下のとおりです。

<高年齢者就業確保措置>

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加え、他の事業主によるものを含む)
    再雇用制度… 定年年齢で一度退職扱いにした後、再度雇用をする制度
    勤務延長制度… 雇用形態を維持したまま雇用を延長する制度
    特殊関係事業主… 元の事業主を基準にして、その子法人等、親法人等、親法人の子法人等、関連法人等、親法人等の関連法人等
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入(過半数組合等の同意が必要)
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入(過半数組合等の同意が必要)
    a. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

<留意事項>

 高年齢者就業確保措置は努力義務なので、対象者を限定して基準を設けることも可能です。その場合は、過半数労働者の同意を得ること、高年齢者のニーズや知識・経験・能力等に応じた業務内容、労働条件とすること、従前とは異なる業務に従事する場合には、研修や教育、訓練等を事前に実施することが望ましいとされています。上記について、複数の措置を講じることも可能ですが、個々の労働者の希望を尊重して決定することが必要です。

 また解雇等により離職する場合について、再就職援助措置・多数離職届の対象となる高年齢者が70歳未満まで(現在は65歳未満まで)となります。

 3.の場合、契約期間を定めるときには、70歳までは契約更新ができること、むやみに短い契約期間を定めないよう努めなくてはいけません。また、特殊関係事業主以外の他社により継続雇用を行う場合は、自社と他社の間で「高年齢者を継続して雇用することを約する契約を締結』する必要があります。

 4.,5.は創業支援等措置として、実施する場合には計画届作成、周知等の手続きが必要となります。

【参照】高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~:厚生労働省

2020.12.14

沖田 眞紀(おきた・まき)

特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。