No.4006 長時間労働による労災リスクから会社と従業員を守る!?
● 前年度より法令違反が若干増加
令和2年9月8日、厚生労働省から「長時間労働が疑われる事業場に対する令和元年度の監督指導結果」が公表されました。
これは、令和元年度(平成31年4月から令和2年3月までの間)に、長時間労働が疑われる32,981事業場に対して実施された労働基準監督署による監督指導の結果を取りまとめたものです。
令和元年度は、監督実施事業場のうち78.1%の事業場で、労働基準法などの法令違反が認められました。平成30年度は、69.6%の事業場で法令違反という結果でしたので、若干増加しています。
令和元年度の監督指導結果のポイントは以下のとおりです。
- 監督指導の実施事業場:32,981事業場
うち、25,770事業場(78.1%)で労働基準関係法令違反あり - 主な違反内容(監督指導を実施された事業場のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付された事業場)
- 違法な時間外労働があったもの:15,593事業場(47.3%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が、
月80時間超~100時間以内のものは、2,221事業場
月100時間超~150時間以内のものは、2,834事業場
月150時間超~200時間以内のものは、594事業場
月200時間超のものは、136事業場 - 賃金不払残業があったものは、2,559事業場(7.8%)
- 過重労働による健康障害防止措置が未実施のものは、6,419事業場(19.5%)
- 違法な時間外労働があったもの:15,593事業場(47.3%)
- 主な健康障害防止に関する指導の状況(監督指導を実施された事業場のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場)
- 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したものは、15,338事業場(46.5%)
- 労働時間の把握が不適正なため指導したものは、6,095事業場(18.5%)
● 令和元年度の監督指導結果の事例から
また、併せて監督指導の事例もいくつか公表されています。
例えば、長時間労働を原因とする脳・心臓疾患の労災請求があった中小企業の事業場(小売業)に対し、立入調査を実施した事例があります。
この事例では、労働基準監督署は、立入調査で把握した事実にもとづき、以下のような対応が行われました。
事実1 | 労働基準監督署の対応 |
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脳・心臓疾患を発症した労働者について、36協定で定めた上限時間(特別条項:月80時間)を超える違法な時間外労働(最長:月103時間)が認められた。 |
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事実2 | 労働基準監督署の対応 |
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一部の労働者について、労働時間を把握していなかった。 |
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ところで、労働基準法や労働安全衛生法などの法令を遵守し、違法な長時間労働とならないように留意することはもちろんですが、万一の場合に備えることも大切です。長時間労働による労働者(従業員)の疾病等が労災とされた場合などに、事業主(会社)が巨額の損害賠償責任を負担することになるケースもあるからです。そのような事態に備える保険は、労災保険の補償に上乗せする、いわゆる「上乗せ労災」(保険会社によって名称が異なる)が有効です。この保険では、労災保険で補償されない使用者賠償責任を補償することもできるからです。経営者にとって、必ず検討しておきたい保険の一つです。
2020.10.19
【参考情報】
また、生命保険の募集人の方は、損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります。今回のテーマと同一ではありませんが、労務リスクからのアプローチトークも収録されています)
「違いを生み出すファーストアプローチ」
第2章 第1話
「労災事故や社員の自殺で会社の過失が認定された!巨額の賠償請求は保険で補償されるの?」
定価 1,210円(税込)
A4判/72ページ
http://www.fps-net.com/shopping_03304509.html
「違いを生み出す生損保リスクチェック」
第3章 法人編5
「「労災事故の内容で補償が違う」のは変?」
定価 1,210円(税込)
A4判/80ページ
http://www.fps-net.com/shopping_03304710.html
水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/生涯学習開発財団認定コーチ
大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。