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No.3988 増えています!電気機器・配線による火災

 自宅で過ごす時間が多くなっている中、エアコンをはじめ家電製品を使う機会が増えている方もいるでしょう。もはや生活に欠かせない存在となった家電製品ですが、使用方法などによっては火災のリスクを伴うことも忘れてはいけません。近年急増しているリチウムイオン電池からの出火を含め、電気火災の状況や原因について確認しましょう。

● 電気火災の割合が年々増加

 東京消防庁の発表によると、令和元年中に管内で発生した火災4,085件のうち、電気火災(電気設備機器などによる火災)は1,283件で31.4%を占めています。平成27年中の電気火災が1,047件で23.6%、平成29年中の電気火災が1,152件で27.4%だったことと照らし合わせれば、年々増加傾向といえるでしょう。

 電気火災の原因を令和元年中のデータでみると、多い順に「維持管理不適」465件、「取扱方法不良」311件、「設置(取付)工事方法不良」82件、「取付位置不適」62件と続きます。割合では「維持管理不適」「取扱方法不良」の合計で約6割となっており、原因の多くが使用者の取り扱いによるものです。それでは家電製品を使う上で、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか?

● 火災が起こりやすいケースは?

 電気火災の代表的な類型は、延長コードの差込みプラグや家電製品の電源プラグの「トラッキング現象」によるものです。「トラッキング現象」とは、コンセントに差し込んだプラグの差し刃間に付着した綿埃(わたぼこり)等が湿気を帯びて微小なスパークを繰り返し、やがて差し刃間に電気回路が形成され出火する現象を指します。

 「トラッキング現象」による火災を防ぐために、使用時以外は差込みプラグをコンセントから抜く、長時間差したままのプラグ等は定期的に点検し乾いた布等で清掃する、発熱等の異常がある場合は交換するといった手当てが重要になります。特に埃や湿気の多い環境で使われているものや、家具等の陰に隠れているものは、気づかぬうちに出火してしまうケースもあるので注意しましょう。

 また、プラグをコンセントに差し込む際、アース線やヘアピンなどを挟み込んでしまい、ショートして出火するケースが増加しています。そのほかコードが家具などの下敷きになる、コードをねじれたり束ねられたりしたまま使用している、照明器具に衣類など燃えやすい物が置かれているといった状態も、火災の原因となります。家電製品は電源をオンにしていなくても、コンセントにプラグが差し込まれている時には通電しており、感電や火災の危険があると改めて認識することが大切です。

● 急増するリチウムイオン電池関連の火災

 近年の電気火災の特徴として、リチウムイオン電池からの出火が急増していることが挙げられます。東京消防庁管内では、リチウムイオン電池関連の火災が平成27年中は26件、平成29年中は56件、令和元年中は102件という推移です。この増加の背景に、スマートフォンや充電用のモバイルバッテリーの普及があります。リチウムイオン電池は従来のニッケル水素電池等と比べ大容量、高出力、軽量であるため、こうした製品にも広く使用されるようになりました。

 リチウムイオン電池関連の火災について、主な原因は誤った充電方法や非純正品の使用、衝撃を与えるなど誤った使用方法にまつわるものです。出火防止のためには安全性を満たす「PSEマーク」または「MCPCマーク」が付いている製品の購入や、正しい使用方法をあらかじめ確認することが大切になります。火災につながりやすい具体的な兆候や誤った行動には、以下のようなものがあります。

  • バッテリーの減りが早くなった
  • 以前と比較して充電中に熱くなっていた
  • 充電中にパチパチという異音、または異臭がした
  • 動作不良を起こしていたが充電してみた
  • 水没したが、時間が経ちまた使用できるようになっていたので使用していた
  • 夏季の車内など高温になる場所に長時間放置していた
  • 充電部分の差込み部分の接触が悪かったが、そのまま使用していた
  • カバンなどに入れていたが、カバンを放り投げたりして強い衝撃を与えていた
  • 飼育している小動物が噛んだり、唾液が付着したことがある
  • スマートフォンなどをズボンの後ろポケットに入れたまま座ったりして、強い外力を与えた

 そのほか経年使用による劣化も、主な出火原因のひとつです。長期間使用したものや使わなくなったものは廃棄した方が無難ですが、不燃ごみとして出すとごみ回収車が焼損するおそれがあります。リチウムイオン電池の回収・再資源化は、電池メーカー等が会員となって設立された「一般社団法人JBRC」のリサイクル協力店(電器店・ホームセンター・スーパーなど)でも実施しているため、近くのリサイクル協力店をホームページ等で確認すると良いでしょう。

参照:
東京消防庁「電気火災を防ごう」
一般社団法人JBRCホームページ

2020.09.14
(セールス手帖社 栗原賢二)