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No.3976 複数の会社で勤務する労働者の労災保険給付が変わります

 厚生労働省では、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。これまでは、副業・兼業を認めない企業が大半でしたが、スキルアップ、資格の活用、収入の確保など、様々な理由で、副業・兼業を希望する人数は、年々増加傾向にあります。

 そんな状況を踏まえ、令和2年9月1日より、複数の会社で勤務している方の労災給付について、賃金額を合算して給付額を決定することとなりました。これによって、保険給付額が多くなること、また、労災認定についても、複数の会社について総合的に判断されるようになるため、これまで不認定だったケースでも、認定されうる場合が考えられます。労働者にとってはメリットの大きい改正ですが、やはり大事なのは、労災事案が起こらないことです。

 労働時間を適正に管理し、健康確保措置を実施することが、企業として重要となりますが、副業・兼業の内容や就業時間について労働者の自己申告も必要なことから、企業と労働者のコミュニケーションが、いっそう求められています。

<賃金額を合算して保険給付額等を決定>

 現行では、労災事案が発生した勤務先の賃金のみを基礎に、給付額を決定。

 改正後は、すべての勤務先の賃金額を合算した額を基礎に、給付額を決定。

 対象となる給付は、休業(補償)給付、遺族(補償)給付、障害(補償)給付などです。

<負荷を総合的に評価>

 現行では、それぞれの勤務先ごとに、負荷(労働時間やストレス等)を個別に評価し、労災認定を判断。

 改正後は、まず、それぞれの勤務先ごとに、負荷(労働時間やストレス等)を個別に評価し、労災認定を判断。労災認定できないときは、複数の会社の負荷を総合的に評価して判断。

 労働者だけでなく、特別加入者についても対象となり、またメリット制には影響しない。

<対象労働者>

 この合算制度の対象となるのは、『複数の会社に所属している』場合です。2つ以上の会社に勤務している労働者は、パート、アルバイトももちろん対象となりますが、副業としての自営業や個人事業主は対象外となります。またリーフレットには、『改正法の施行日(令和2年9月1日)以降に、けがをした労働者の方や病気になった労働者の方、お亡くなりになった労働者のご遺族の方』が対象、と記載されており、施行日前に発生した事案については、改正前の法で判断される可能性があります。

【参照】厚生労働省HP
副業・兼業
労働者災害補償保険法の改正について~複数の会社等で働かれている方への保険給付が変わります~

2020.08.24

沖田 眞紀(おきた・まき)

特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。