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No.3924 自然災害に備えた住宅ローンも選択肢に

 近年の自然災害増加を受け、住宅ローンに自然災害時の補償付き商品を用意する金融機関が増えてきました。補償内容やそのコストについて見てみましょう。

● 最大2年間、実質的な返済免除も

 住宅ローンは、自然災害で住まいに大規模な損害を受けたとしても、返済自体が免除されるわけではありません。そういったときの返済リスクに備えるのが、一般的に「自然災害時支援特約付」などの名称の付いた住宅ローンです。

 その種類については、金融機関によって異なりますが大きく次の2つのタイプに分けられます(タイプの名称は銀行によって異なります)。

  1. 一定期間の住宅ローン返済額を実質的に免除する「返済補償型」
  2. 建物ローン残高の一定割合の債務を免除する「残高補償型」

 ある銀行の、それぞれの補償内容を見てみると……。

【返済補償型】

  • 補償対象の自然災害: 地震・津波・噴火・落雷・水災・風災・ひょう災・雪災
  • 補償内容: 罹災状況によって最大24回(2年)の約定返済額を払い戻し
    全壊:24回分、大規模半壊:12回分、半壊:6回分

【残高補償型】

  • 補償対象の自然災害:地震・津波・噴火
  • 補償内容: 自宅が全壊の認定を受けた場合、建物部分の住宅ローン残高の50%相当額の債務が消滅

 ただし、金融機関によっては、一方のみしか取り扱っていない場合があります。

● 金利は上がるが付けるべきか?

 特約のコストとしては、金利に上乗せするなどによります。例えば、ある銀行の返済補償型では、対象になる住宅ローン金利に0.1%の上乗せ、残高補償型では同じく0.3%上乗せといった内容です。

 仮に3,000万円を、金利1%、借入期間35年、元利均等返済で借り入れた場合、毎月返済額は84,685円、総返済額は約3,557万円です。これに、0.1%の金利上乗せで返済補償型の特約をつけた場合、毎月返済額は86,091円、総返済額は約3,616万円となり、毎月で約1,400円、総額で約60万円の増額になります。

 大規模な自然災害では、公的な支援もありますが、それだけでは十分ではありません。火災保険や地震保険に入っていても、生活再建はむずかしいこともあるでしょう。住宅ローン返済中に被災すれば、二重ローンという問題も発生します。

 住宅を購入する際には、購入地域の立地や自然災害リスクを見極めて、必要だと思われれば、こういった自然災害時の家計リスクを軽減する住宅ローンも選択肢になるでしょう。

2020.05.07

高橋 浩史 (たかはし・ひろし)

FPライフレックス 代表(住まいと保険と資産管理 千葉支部)
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFPR
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社、百貨店、広告代理店などでグラフィックデザイナーとして20年間活動。
その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。
住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。
その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。

ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/