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No.3920 所有者不明土地の解消に向けて対応策が次々に実現

● 所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応

 所有者不明土地への対応策を、関係省庁である総務省や国土交通省、法務省が次々に実現している。

 令和2年度税制改正においては、所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題に対応するため、所有者情報の円滑な把握や課税の公平性の確保の観点から、現に所有している者(相続人等)の申告の制度化や使用者を所有者とみなす制度を拡大する。

 具体的には、現に所有している者(相続人等)の申告の制度化について、市町村長は、その市町村内の土地・家屋について、登記簿上の所有者が死亡し、相続登記がされるまでの間における現所有者(相続人等)に対し、市町村の条例で定めるところにより、氏名・住所等必要な事項を申告させることができることとする。令和2年4月1日以後の条例の施行の日以後に現所有者であることを知った者について適用する。

 また、使用者を所有者とみなす制度を拡大し、住民票、戸籍等の公簿上の調査、使用者と思われる者やその他関係者への質問などの調査を尽くしてもなお、固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合、事前に使用者に対して通知した上で、使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課すことができることとする。令和3年度分以後の固定資産税について適用する。

● 土地基本法等改正法と民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正

 国土交通省は、所有者不明土地・管理不全土地の発生抑制・解消のため、地籍調査の円滑化・迅速化を図る取組みを加速させる制度等を3月27日に成立した土地基本法等改正法に盛り込んだ。地籍調査の円滑化・迅速化のため、令和2年度からの新たな国土調査事業十箇年計画を策定し、所有者探索のための固定資産課税台帳等の利用、所有者等からの報告徴収、地方公共団体による筆界特定の申請等の調査手続きを見直した。

 法務省は、法制審議会民法・不動産登記法部会が、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に係る中間試案を令和元年12月3日に取りまとめた。ポイントは、相続登記の申請の義務化や、一定の要件の下で土地所有権の放棄を可能とする制度、長期間経過した場合に遺産分割を合理的に分割する制度の創設で、本年中に民法・不動産登記法の改正法案を国会に提出する予定となっている。

 関係省庁の対応は、骨太の方針2019(令和元年6月21日閣議決定)で、所有者不明土地等の解消や有効活用に向け、「土地の適切な利用・管理の確保や地籍調査を円滑かつ迅速に進めるための措置、所有者不明土地の発生を予防するための仕組み、所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み等について令和2年までに必要な制度改正の実現を目指す」と記載されたことを受けてのもの。

2020.04.27

浅野 宗玄(あさの・むねはる)

株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php