No.3919 新型コロナでテレワークが急増
● 正社員のテレワーク実施率は13.2％
株式会社パーソル総合研究所は、新型コロナウイルス感染症によるテレワークへの影響について、2020年3月9日～15日に全国の正社員2万人を対象に調査を行い、その結果を発表している。これまでにも同様の調査はいくつもあるが、今回の調査結果には現在猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症がテレワークにもたらした影響が如実に表れている。
調査結果によると、正社員におけるテレワーク（在宅勤務）の実施率は13.2％で、国勢調査をもとに簡易的に推計するとその数は約360万人にのぼった。首都圏はじめ大都市がある都道府県で緊急事態宣言が発出され、外出自粛要請がなされたことにより、可能な限り出勤せずに自宅での勤務が求められている。このことから多くの企業でテレワークが急速に広がった。そのためテレワーク実施者のうち、半数近い（47.8％）人が今回初めてテレワークを体験したと答えている。
● テレワーク希望するも制度が追いつかず
この調査ではテレワークの現状が見えてくるのと同時に課題も明らかになった。社員自身がテレワークを希望しても、会社がテレワーク制度をそもそも導入していないというケースもある。テレワークを実施していない人のうち、「希望しているができていない」と答えたのは約3分の1（33.7％）も占めていた。従業員の希望と実際の状況のギャップは大きい。
テレワークを実施していない人に理由を聞いたところ、主な答えは「テレワーク制度が整備されていない」41.1％、「テレワークを行える業務ではない」39.5％、「テレワークのためのICT環境が整備されていない」17.5％、「テレワークを行う場所がない」17.0％であった。テレワーク制度を導入するのは簡単なことではないが、出社率を下げるよう国や地方自治体から会社に対して要請される事態になったことから、テレワークが可能な業務については今からでも導入に向けてのアクションを起こす必要があるのではないだろうか。
● テレワークを命じられている・推奨されている人は22.1％
このような状況下では会社の方針も気になるところである。調査結果によると、会社からテレワークを命じられている人は3.2％、テレワークを推奨されている人は18.9％と、命令・推奨の合計は約2割（22.1％）となった。一方で、会社から特に案内がない人は71.5％に及び、通常通り出勤していることが推測される。
企業規模が大きいところほどテレワークが進んでいるようだが、中小企業であっても業種によってはいち早く在宅勤務をスタートしているところもある。テレワークを導入すれば通勤時間がなくなり、新型コロナウイルスに感染するリスクを大幅に下げることができるなどそのメリットは大きい。その一方で、実際にテレワークをしている人の声としては、「ずっと自宅で1人だと寂しい」「集中力が続かない」「生産性が上がらない」などというものもあるので、これらは会社側としてしっかり対策をしていかなければならない。
テレワークの重要性は以前から叫ばれており、当初は東京オリンピックの開催時期に大企業が試行的に導入する予定だったが、不幸にも今回の新型コロナウイルス感染症の拡大が中小企業も含めた多くの会社を動かすきっかけになったというのは感慨深い。
事業の発展のため――というよりもこの深刻な状況では事業の存続を図るため、変化に対応する柔軟性が問われているのは言うまでもない。今回の調査結果を踏まえて、未導入の会社は一歩踏み出したいところである。
参照：パーソル総合研究所「新型コロナによるテレワークへの影響について、全国2万人規模の緊急調査結果を発表 急増するテレワーク。正社員の13.2%（推計360万人）がテレワークを実施」
2020.04.27
庄司 英尚（しょうじ・ひでたか）
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所（現・アイウェーブ社労士事務所）を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/