No.3916 新型コロナウイルス感染症に保険が使える!?
● 新型コロナウイルスに保険が使えるか?
新型コロナウイルスによる感染症については、世界的に感染が拡大しています。日本では2020年4月7日に緊急事態宣言も発出され、翌8日から5月6日まで所定の要請等が実施されています。この感染症は、日本では2020年1月28日の政府閣議決定により、2020年2月1日付で感染症法*1に規定する「指定感染症」に指定されましたが、この感染症に対して生命保険や損害保険が使えるか否かは以下のとおり対応がわかれています(詳細は各保険会社で異なる場合があります)。
*1 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年)法律第114号
<生命保険会社の場合>
商品 | 概要 |
入院保障のある商品 (医療保険、入院給付特約等) |
入院した場合は病気の治療のための入院とみなされ、入院給付金の支払対象となる。 また、所定のホテルや自宅での療養の際も入院給付金の対象となる。 |
死亡保障のある商品 (定期保険、終身保険等) |
死亡した場合は病気が原因での死亡とみなされ、死亡保険金の支払対象となる。 ※災害死亡保険金も支払対象とすることを検討中の保険会社もある。 |
* 新型コロナウイルス感染症と診断された場合に見舞金が支払われる保険会社もある。
<損害保険会社の場合>
(以下に記載の保険や約款などの名称、内容は保険会社によって異なる場合があります)
1.保険金の支払対象となる保険(主なもの)
(1)個人向け保険
①疾病を補償する保険
商品 | 対象となる約款・特約など | 概要 |
団体総合生活補償保険 | 疾病補償特約など疾病を補償する特約 | 新型コロナウイルスによる感染症は疾病に該当するため、発病時期や入院(所定のホテルや自宅での療養含む)開始時期等の所定の条件を満たした場合支払対象となる。 |
学生・こども総合保険 | ||
所得補償保険 | 普通保険約款 |
②海外旅行保険
商品 | 対象となる特約 | 概要 |
海外旅行保険 | 疾病死亡保険金支払特約 | 旅行行程中に病気で死亡した場合、もしくは、旅行行程中に発病した場合または旅行行程終了後72時間以内に発病した病気(その原因が旅行行程中に発生したものに限る)により、旅行行程の終了日を含めて30日以内に死亡した場合支払対象となる。ただし、旅行行程終了後72時間を経過するまでに医師の治療を開始したものに限る。 |
治療・救援費用担保特約 | 旅行行程中に発病しまたは感染し、旅行行程終了後72時間を経過するまでに医師の治療を開始した場合支払対象となる。 | |
疾病治療費用担保特約 | ||
旅行変更費用担保特約 | 所定の渡航先に対する退避勧告等が発出され、出国を中止した場合支払対象となる。 |
(2)企業向け保険
①従業員の労災を補償する保険
商品 | 対象となる約款 | 概要 |
労働災害総合保険 | 普通保険約款 | 業務上疾病として政府労災保険等の認定を受けた場合支払対象となる。 |
②休業損失を補償する保険
商品 | 対象となる約款 | 概要 |
生産物賠償責任保険 旅館賠償責任保険 店舗賠償責任保険 |
食中毒・特定感染症利益補償特約 | 新型コロナウイルスによる感染症は指定感染症に該当するため支払対象となる。 |
2.保険金の支払対象とならない保険(主なもの)
(1)個人向け保険
①傷害を補償する保険
商品 | 対象となる約款 | 概要 |
傷害保険 | 普通保険約款 | 新型コロナウイルスによる感染症は傷害には該当しないため支払対象とならない。 |
国内旅行傷害保険 |
(2)企業向け商品
①休業損失を補償する保険
商品 | 対象となる条項 | 概要 |
企業総合保険 | 休業補償条項 | 感染症法に規定する「感染症」の発生による休業損失は支払対象とならない。 |
②イベントの中止によって生じた損害を補償する保険
商品 | 対象となる条項 | 概要 |
興行中止保険 | 興行中止保険特約条項 | 感染症法に規定する「感染症」によるイベントの中止によって生じた損害は支払対象とならない。 |
上記のとおり、新型コロナウイルスによる感染症についての対応は、保険や特約等によっても異なります。取り扱い内容は今後変更される可能性もありますので、詳細は各保険会社から最新の情報を入手することをおすすめします。
また、新型コロナウイルス感染症への対策としては、保険を活用する以前に感染しないように予防することが先決です。「手洗い」や「マスクの着用」を含む「咳エチケット」などの通常の感染症対策に加えて、密閉・密集・密接のいわゆる3つの密を避けることが大切です。
最後に、新型コロナウイルス感染症による個人や企業の経済的な損失を補てんする手段は、生命保険や損害保険だけに限りません。政府や各地方自治体の助成金や補助金、給付金のほか、各種融資制度など検討すべき手段は複数あり、今後もより拡充されることが予想されます。保険募集人やFPの方は、社労士や税理士等の専門家とも連携するなどして、情報提供を通じてお客さまをサポートするチャンスではないでしょうか。
注: 記事の内容は4月8日執筆時点のものです。
【参考情報】
また、生命保険の募集人の方は、損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります。ただし、今回のテーマは収録されていません)
「違いを生み出すファーストアプローチ」
第2章 第7話
「地震が起こると言われているけど、地震保険に入った方がよいの?」
定価 1,210円(税込)
A4判/72ページ
http://www.fps-net.com/shopping_03304509.html
「違いを生み出す生損保リスクチェック」
第3章 個人編1
「分譲マンションは頑丈だから地震保険はいらない?」
定価 1,210円(税込)
A4判/80ページ
http://www.fps-net.com/shopping_03304710.html
2020.04.20
水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/生涯学習開発財団認定コーチ
大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。