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No.3911 「新型コロナで休業したら…」休業手当の基本事項

● 新型コロナウイルス対応に必須

 新型コロナウイルス感染症の影響により仕事をしてもらうことができなくなり、企業が従業員を休ませているケースが発生している。その際に企業は休業手当を支給することを検討しなければならないが、そもそも休業手当とはどのようなものなのかわかっていない方もいるので、今回は休業手当の基本事項及び関連事項についてまとめておきたい。

 休業手当は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならない」と労働基準法に定められている。

 例えば従業員が体調不良で会社を休んだ場合、ノーワークノーペイの原則から賃金は発生しないわけだが、一方で使用者の都合により従業員を休ませた場合、従業員も生活に困ってしまうのでその際には最低部分の補填をするように法律で規定し、従業員を保護しているわけである。

● 使用者の責に帰すべき事由とは?

 使用者の責(せめ)に帰すべき事由による休業に該当するものとして、不況等による工場閉鎖や部品調達の遅れで工場が稼働できなくなった時などがある。また、新規学卒採用内定者を自宅待機させる場合も同様である。

 一方で、コロナウイルスに感染した従業員の出社を拒むのは、都道府県知事が行う就業制限に該当するので、それは使用者の責に帰すべき事由とはされないことになっている。

 不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はない。ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、の2つの要件を満たすものでなければならない。

 例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させる(テレワークなど)ことが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するため、休業手当を支払わねばならなくなるので注意が必要である。

 過去には、地震や台風で公共交通機関がストップして従業員が出勤することができないようなこともあったが、これは事業主の責任ではないので休業手当の支給の必要はない。

● 企業が考えておくべきこと

 新型コロナウイルス感染症の影響による休業で賃金を支給し所定の要件を満たしている場合、雇用調整助成金の支給対象になるので、この点は理解しておきたい。

 休業手当の支給は、従業員が最低6割しかもらえないので、年次有給休暇を取得したいという申し出が従業員からあった場合には、それを会社は受けることになる。会社側から強制的に年次有給休暇を取得させることはできない。雇用調整助成金の利用も考えて、普段なかなかできない教育訓練などもこの機会に検討したい。その場合は集合研修は避けて、パソコン上で業務に必要な動画(セミナーや業務マニュアルなど)を視聴してもらうのもいいだろう。

 中小企業では在宅勤務制度を導入している企業は少ないが、それでもこのような状況下では今後を見据えてシステムやパソコンなどの設備投資にも力を入れていきたい。とにかく企業も従業員も環境の変化に柔軟に対応できることが求められているので、国の方針や法律などの基本的事項を押さえながら的確な判断をして実務を進めていくことが望ましい。

注:記事の内容は、4月6日執筆時点のものです。

参照:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」

2020.04.13

庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)

株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/