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No.3868 社会問題となっている「引きこもり」。定義、今後の問題、対策について

 2019年は「引きこもり」の当事者や、「引きこもり」の子を持つ親による痛ましい事件が多発したことにより、「引きこもり」そのものに関心が集まる年となりました。

 そもそも「引きこもり」とはどのような状態を示すのでしょうか。「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」によると、「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」を指すとされています。

 内閣府が2018年度に実施した調査(「生活状況に関する調査」)では、40歳から64歳までの広義の引きこもり(※)状態にある者は61.3万人。また、狭義の引きこもり状態にある者は、36.5万人存在すると推計されています。なお調査では、「普段どのくらい外出するか」という質問に対して、「①趣味の用事だけの外出、②近所のコンビニだけは出かける、③自室からは出るが、家から出ない、④「自室からほとんど出ない」という選択肢の中から②~④を選択した者を「狭義の引きこもり」、①を選択した者を「準ひきこもり」、それらをあわせて「広義の引きこもり」と定義しています。こうして見ると、「引きこもり」と定義される範囲は意外に広いようです。

「引きこもり」がもたらす問題

 「引きこもり」の問題点として考えられることは何でしょうか。たとえば、自室にこもったままで健康面に悪影響を及ぼす、親の経済的な負担が大きいなどのほか、長期的な問題としては、社会復帰が難しくなる、精神疾患の発症、自殺や犯罪の可能性、親の高齢化により経済的な負担が増すなど。さらに、親が亡くなった後の子どもの生活をどうするか、ほかにも、生活苦となり生活保護世帯が増えることで社会的にコストの負担増なども懸念点として挙げられます。

「引きこもり」の支援について

 「引きこもり」は、当事者だけではなく、家族にとって経済的にも精神的にも辛いことです。長期化するほど、解決するのが難しくなると言われています。

 そうした状況を脱するには、家族だけで解決しようとするのではなく、何かしらの支援を頼ることが改善策だとは言われています。しかし家庭という閉塞的な空間で起こり得るという問題の特性上、なかなか表面化しづらい現状もあるようです。簡単に解決できる問題と言い難いとはいえ、やはり行政を中心とした外部の支援機関を頼ることは解決策となるはずです。

 現在行政による引きこもり支援策としては、「ひきこもり地域支援センター」が各地に設置されています。社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士などの専門家による「ひきこもり支援コーディネーター」が在籍し、医療、教育、就労、行政、民間団体などの各機関と連携を取りながら、引きこもりの支援にあたっています。なお、2019年4月時点で「ひきこもり地域支援センター」を設置しているのは67の自治体です。

 一方、引きこもりの相談を受ける側の質も向上も求められています。実際、引きこもり支援に携わる人材の研修や養成は、自治体により積極的に行なわれています。

 ひきこもり問題を根本的に解決することは難しいかもしれません。しかしこうした社会全体による支援の輪が広がることが、長い目で見た問題解決への糸口になることには間違いありません。

参考:
「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」厚生労働省
「社会的孤立に対する施策について」厚生労働省
「生活状況に関する調査(平成30年度)」内閣府

2020.01.27

小沢 美奈子(おざわ・みなこ)

K&Bプランニング代表 ファイナンシャルプランナー(AFP)/ライター

法政大学卒業後、損害保険会社にて、人材教育部門で社員教育・研修講師など約12年間勤務の後、外資系損害保険会社で営業職に就く。ファイナンシャルプランナー取得後は、独立系FP事務所、住宅メーカーを経て独立。
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ホームページ http://kandbplanning.org/

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