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No.3862 紹介状なしの大病院等受診時定額負担の拡大へ 
~2020年度診療報酬改定の目玉の中身~

● 定額負担の対象を「200床以上」へ緩和

 2020年度の診療報酬改定で大きな懸案事項の一つとなっているのが、「紹介状なしでの大病院等の受診にかかる定額負担」の範囲拡大だ。このしくみは、かかりつけ医の紹介状なしで「一定規模以上等の病院」を受診した場合、患者に「医療保険による定率負担」のほかに「定額負担」を求めることを医療機関の責務とするものである。「責務」となっているからには、国が定めた金額(現行で初診時は5,000円、再診時2,500円。歯科の場合は、前者で3,000円、後者で1,500円)以上の料金が病院にかかわらず徴収されることになる。

 ただし、以下については例外として定額徴収は行われない。それは、救急の患者、難病などの公費負担医療の対象患者、無料低額診療事業の対象患者、HIV感染者となる。また、特定健診やがん検診等の結果により精密検査の指示があった患者については、「定額負担を求めなくてよい」とされている。

 このしくみが最初に導入されたのが、2016年度。目的は、地域医療の中核となる病院に軽症患者などが集中するのを防ぎ、機能の集中化を図るためである。この時の定額負担対象となる病院は、「特定機能病院および一般病床500床以上の地域医療支援病院」だった。

 それが、わずか2年後の2018年度には、地域医療支援病院について「許可病床(一般病床だけでなく療養病床や精神病床も含む)400床以上」に拡大された。そして、2019年12月11日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、「一般病床200床以上の地域医療支援病院も含む」という案が提示された次第である。これは、この定額負担導入による患者の受療行動に思ったような効果が上がっていないデータが示されたことが背景にある。

● 対象となるのは、どのような病院なのか?

 ところで、ここでいう「特定機能病院」および「地域医療支援病院」とは何か。前者については、高度医療を提供するほか、そのための技術開発や研修を行なう能力があると厚労大臣から承認された病院を指す。その病院数は、2019年4月時点で86となっている。一方、後者の地域医療支援病院とは、かかりつけ医を支援する能力を備え、地域医療の確保を図るうえでふさわしい構造設備を有するものについて、都道府県知事が個別で承認するというもの。原則として「200床以上」を備え、紹介率が80%以上であるなど(例外あり)の要件を満たすことが必要となっている。

 上記で「原則200床以上」となっているとおり、今回の案が採用されれば、ほとんどの地域医療支援病院で「紹介状なしの受診に際しての定額負担」が発生することになる。ちなみに、2018年12月時点で地域医療支援病院の数は607、そのうち現行で徴収対象となっている「400床以上」は334となっている。一方、「200床未満」はわずか20、つまり、今回の案で新たに徴収対象となるのは「200床以上400床未満」の253病院となるわけだ。

 ただし、今案で新たに徴収対象に加わる病院(200床以上400床未満)も、現行では選定療養にかかる特別料金が徴収でき、実際に徴収しているのは90%以上におよんでいる。この点から、患者側の受療動向に大きな変化はないという見方もあるが、上記の徴収額平均は2018年10月時点で約2,800円(初診時)なので、やはり患者側の負担感が強いことに変わりはない。患者側としては「紹介状を書いてくれるかかりつけ医」との関係がますます重要になるのは間違いないだろう。

2020.01.14

田中 元(たなか・はじめ)

 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『〈イラスト図解〉後悔しない介護サービスの選び方【10のポイント】』『介護リーダーの問題解決マップ -ズバリ解決「現場の困ったQ&A」ノート -』(以上、共にぱる出版刊)、『スタッフに「辞める!」と言わせない介護現場のマネジメント』(自由国民社刊)、『現場で使えるケアマネ新実務便利帳』(翔泳社刊)など多数。

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  • 第4章 【応用編③】対リハビリ職との連携では自立支援・重度化防止がカギとなる
  • 第5章 【応用編④】栄養と口腔ケアにかかわる専門職との連携のポイント
  • 第6章 【応用編⑤】対行政・包括等との連携では複雑化した課題解決をめざす
  • 第7章 【応用編⑥】「共生社会」をめざす連携で生まれる介護現場の新たな課題