お客様のお役に立つ JAIFA学習帖

  • サイト内検索:

No.3860 キャッシュレス決済、便利だけど使いすぎも心配に?

 2019年10月からの消費税増税に合わせて始まった、国によるキャッシュレス・ポイント還元事業。還元対象の店舗数は順調に増え続け、決済額も伸びているようです。

● ポイント還元の原資は増額へ

 経済産業省のニュースリリースによると、キャッシュレス・ポイント還元事業の登録加盟店数は、12月16日現在で約90万店、12月21日には約94万店になる見込みです。2020年4月末まで加盟店申請は受け付けているため、今後も増えることが予想されています。

 加盟店数の増加などで、ポイント還元も想定を上回るペースで増えているようです。新聞報道によると、制度開始から約5週間の1日あたりの平均還元額は12.1億円でした。

 こういった状況から、ポイント還元の原資となる国の予算も不足する見通しになり、当初の4,000億円規模から3,000億円程度増やし、7,000億円の規模で調整が始まった模様です。

 そもそも今回のポイント還元事業は、世界的に見て低い日本のキャッシュレス決済比率を高めることと、消費税の増税で影響を受けやすい中小の店舗を支えるのが目的でした。

 しかし、始まってみると大手コンビニの利用者が多く、本来の目的とのズレも指摘されています。

● ポイント目当ての使いすぎには注意が必要に

 キャッシュレス・ポイント還元事業は、2020年6月末まで続くため、今後も利用者・決済額の増加が予想されます。とはいえ、利用者が増えているのは、ポイント還元目当てという側面もあるでしょう。事業が終わった後もこの流れが続くのかどうかはわかりません。

 また、キャッシュレスでは使いすぎが心配という声も耳にします。日本クレジットカード協会「現金とクレジットカード間の購入単価格差に関する調査」に、業種別の購入者のクレジットカードと現金の利用額の差のデータがあります。

 それによると、単価比率(現金決済単価に対するクレジットカード決済単価の比率)は雑貨店や文具店で約2.5倍、衣料品店では2.3倍、業種全体平均では約1.7倍、クレジットカードの利用額が多いという結果でした。キャッシュレスの方が、現金で買い物するよりも2倍近くお金を使っていると見ることもできそうです。

 使いすぎる原因のひとつは、手持ちのお金がなくても買えてしまうことでしょう。後払いのクレジットカードなどではお金を使っている感覚が薄く、買い物への心理的な抵抗感が少なくなり、つい多くのものを買ってしまうのかもしれません。

 国が主導するキャッシュレス決済ですが、その本質は生活を便利にするものといえます。キャッシュレス・ポイント還元事業で最大5%のポイント還元があるとはいえ、ポイントはあくまでも「おまけ」と捉え、使いすぎを防ぐためにも、ポイント目当て支出は控えるようアドバイスすることも必要になるかもしれません。

参考: 日本クレジットカード協会「現金とクレジットカード間の購入単価格差に関する調査」

2020.01.06

高橋 浩史 (たかはし・ひろし)

FPライフレックス 代表(住まいと保険と資産管理 千葉支部)
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFPR
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社、百貨店、広告代理店などでグラフィックデザイナーとして20年間活動。
その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。
住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。
その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。

ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/