相続税VS所得税
Q:相続対策として父を被保険者とした生命保険への加入を考えています。現在のところ父の健康状態は心配ありません。生命保険を契約する場合、契約形態によって課税関係が相違すると聞きましたが、どのような契約形態が有効ですか。
A:生命保険は契約者と被保険者・死亡保険金受取人の関係で課税が異なることになります。
パターン | 契約者 | 被保険者 | 死亡保険金受取人 | 課税の種類 |
---|---|---|---|---|
Ⅰ | 父 | 父 | 子 | 相続税(非課税の取扱いあり) |
Ⅱ | 子 | 父 | 子 | 所得税(一時所得)・住民税 |
[パターンⅠ]の相続税タイプの場合、受け取る死亡保険金のうち「500万円×法定相続人の数」までの金額が非課税となります。死亡保険金受取人が受け取った死亡保険金は相続人固有の財産になり、死亡保険金受取人が相続放棄をした場合であっても死亡保険金を受け取ることが可能です。しかし、この死亡保険金はみなし相続財産として相続税が課税されますので、受け取る死亡保険金分だけ相続財産が増えることになります。相続対策としては、一般に[パターンⅠ]を選択する場合が多いようです。
相続財産が多額である場合は、受け取る死亡保険金にかかる相続税率も高い率となるために、[パターンⅠ]の相続税タイプでは、受け取った死亡保険金が相続税の納税資金を十分にまかなえないケースがあります。その場合は、[パターンⅡ]の一時所得タイプを活用すると、受け取った死亡保険金は相続人の一時所得としてほかの所得と合算され、所得税・住民税の課税対象となります。
課税所得が1,800万円超4,000万円未満となる場合の税率は、所得税+住民税で50%、4,000万円超は55%の最高税率が適用となります。
課税される一時所得の金額は次のように計算します。
(受取保険金-既払込保険料-50万円)×1/2
なお、一時所得タイプで受け取った場合、相続税の課税対象額は増加することはなく、相続財産には含まれない納税資金準備ができることになります。
相続財産額と相続人数などを考えて、どちらのタイプの契約が有利になるか検討する必要があります。
2023.04.01 (栗原)